――旭化成は1990年代から知財戦略に力を入れてきたそうですが、何か転機となる出来事があったのでしょうか。
笠井 化学の領域では電機やIT分野と比べるとアグレッシブな特許訴訟が相対的に多いわけではなく、知財での大きな攻防によって莫大な利益を得たり、損失を被ったりという転機があったわけではありません。
とはいえ、特許を侵害しないための調査をはじめとする知財調査を重んじてきた会社であることは確かです。そのため技術者はもちろん、経営メンバーも知財の重要性について理解が深いという土壌がありました。そうした風土が脈々とあり、知財を取り巻く新しい活動を生み出すことに対しても受け入れられやすかったと思います。
――組織の話に移ります。旭化成には「知的財産部」と「知財インテリジェンス室」という知財に関連する部門が2つあるそうですね。それはなぜですか。
笠井 2022年4月に、もともとあった「知的財産部」から、IPLをつかさどる機能をスピンオフする形で「知財インテリジェンス室」を設置しました。この組織改編のポイントは、IPLをR&D(研究開発部門)の管掌下にある知的財産部の“外”に出すことで、経営企画の管掌下に独立して設置したことです。
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現在、知的財産部では権利形成、つまり発明を権利にしていく機能を担っています。先ほどお話しした一つ目の機能です。一方、知財インテリジェンス室は二つ目の機能を担います。IPLを中心に行い、知財を事業戦略や経営戦略に活用するための機能です。
IPLを高度化させた
背景には何があったのか
――2022年に組織分化を決断した「きっかけ」は何だったのでしょう。
笠井 もともと当社では、2018年ごろからIPL自体は開始していました。とはいえ当初は、R&D向けの研究開発の方向性や、特許出願をどう進めるかといった課題に資する手段として用いていました。
しかし活動が高度化していく中で、IPLは必ずしもR&D向けの手段にとどまらず、事業戦略やさらに上流の経営戦略、経営判断を高度化する場面で利活用できるのではないかという機運が高まっていきました。それが2022年前後のことです。







