外部環境も後押ししました。2021年6月、東証のコーポレートガバナンス・コードが改定され、知財の情報開示を進めること、知財の投資・活用について経営が責任を持ち監督することといった趣旨が盛り込まれました。
これにより上場企業として、知財部門がR&Dの傘下においてだけでなく、経営に近い場所でコミュニケーションする必要性を強く感じました。このような背景を経営トップに伝えることで、組織改編への理解を得て分化した、という流れです。
複数のアウトプットを組み合わせて
客観的な判断材料を提供する
――IPLをつかさどる知財インテリジェンス室は、具体的にどのような場面で経営や事業に関与しているのですか。
笠井 大きく分けて、経営戦略の高度化、事業戦略の検討、開発戦略の検討の3つに関与しています。ただし担当者ごとに、経営だけ、事業だけという特定の分野を担当しているわけではありません。テーマごとに、メンバー全員が関わる形で取り組んでいます。
経営戦略の高度化について言えば、例えば他社との合弁会社設立や事業統合のように、経営判断が求められる案件があります。そうした場面で「この相手は本当に最適なのか」という問いに対し、IPLを使って知財の視点で検証するアウトプットを出します。
具体的には、複数社の特許ポートフォリオを同一空間上に配置し、技術的な重なりや隙間を俯瞰(ふかん)します。ある会社と組めばこの技術クラスターを一気に補完できる、あるいはこの会社とは競合領域が多く、補完よりも競争の色合いが強い、といった示唆が出てきます。
これは単なる件数比較ではなく、技術の中身や発展方向を踏まえた解析です。そうした分析を踏まえ、「このパートナーであれば、技術的シナジーがありそうだ」という判断材料を提示します。
もちろん、IPLのマップ一枚で「この会社が良い」「この統合は正しい」と判断できるわけではなく、実際には複数のアウトプットを組み合わせています。
特許ポートフォリオの位置関係、技術分野の重なり、将来性のある領域への布陣、さらには財務情報や市場動向なども含めて分析し、ストーリーを組み立てる。その上で、経営が判断する際の客観的な材料の一つとして提示するという位置付けです。







