脳をモデルに作られたAIを
今度は脳の理解のために使う
──「視覚の次は聴覚、その次は……と、感覚機能全てのアップロードは気が遠くなりますが、本当に20年で可能なのでしょうか?」
半信半疑な自分がいる。生半可な死後の世界をこれまで信じずに、半ば意固地になって生きてきたタナトフォビアな私だ。脳の全感覚機能を置き換えるということは、地球で生命体が誕生してから人間が誕生するまでの40億年を20年で再現することのように思えた。
渡辺:そうですね。例えば、AIは爆速で進化していますけど、その進化を神経科学に逆輸入できると考えています。今のAIは、もともと神経科学から輸出した人工神経回路網です。その人工神経回路網が独り歩きして、ものすごいスピードで進化している。意識の宿る機械というのは、つまるところ人工神経回路網、すなわちAIです。
私の提案する人工意識のテストでは、そのAIと脳を密に結合し、相互作用させることになるので、同時に脳の理解も急激に進むことになります。その意味において、AIの爆発的な進化を、神経科学に逆輸入できると考えているのです。
意識のアップロードの研究は、神経科学だけではなく、関係する多くの科学領域に波及し、研究のトレンドが様変わりするぐらいのインパクトをもたらすでしょう。
ただ、今私が話していること全てを真に受けている人はあんまりいないと思います。みなさん、100%できるとは思っていない。私にしても、100%できるとは思っていない。逆に、現時点で100%できるという科学者がいたら、それは詐欺師です。いろんな仮定の上に成立している仮説なので。10年やってみた結果、「ごめんなさい、やっぱり機械に意識は宿りませんでした」ってオチがあり得る状態ですね。「金輪際できません」という結果が出てしまう可能性もある。
このステップを、最初の10年で300億円かけて実証する。意識のアップロードの5合目までを登ってみせる。
夢の片鱗さえ提示できれば
資金も技術も集まってくる
『死ぬのが怖くてたまらない。だから、その正体が知りたかった。』(浦出美緒、SBクリエイティブ)
渡辺:重要なのは、私にはその登山ルートが見えていることです。コンピューターの進化も、今の進化のペースで大丈夫。私の提案する、ブレイン・マシン・インターフェース(脳と機械を直接接続させて、情報の伝達や操作を可能にする技術)にしても、そういうデバイスが段階的に発展していけば、突発的なイノベーションを前提とせずに、5合目まで到達できる。今の技術の延長線上で、十分実証できると考えています。
そして、ここまで達したら、全く景色が変わってきます。「これは大変だ、本当に不老不死ができちゃうかもしれない」。そう世界に思わせたら、金のかかり方がガラッと変わってくるはずです。
話を元に戻すと、今一番の障壁は、結局は、真に受ける人が十分にいないっていうことかもしれない。日本は結構難しいかもしれないですね。まず、不老不死については是々非々だろうし、そんな1つの技術に300億円もかけちゃうの?といった意見はどうしてもでてくる。







