出雲大社に入った西洋の俳優では「僕がはじめて」!?

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 会ったことのない人物を知る手立てとして、曽孫の小泉凡さんに会ったことの影響は大きかった。

「血の繋がった子孫にお会いしたとき、本当に小泉八雲という人がいたんだ、と実在する人物として捉えることができました。また、凡さんの笑顔の中に小泉八雲さんの笑顔が垣間見えた気がして、非常に有意義な経験でした」

 偉人や作家である前に、同じ人間である、という考え方に行き着く前に、事前にできる限りの準備は行った。

「極力、準備には時間をかけました。ハーンの資料を調べて、ベースの役作りを行い、現場に入ったとき、それが自分にとってもリアルなものになっているようにしました。同じ人間とはいえ、もちろん私はハーンさんとは違う人間ですけれど、なるべくハーンさんと共感できるように、ハーンさんのリアルと自分の経験を組み合わせて役作りに生かせるように、取り組んでいます」

 つまり、ハーンをリスペクトしつつ、そこに自分らしさも加えるということだ。これは、チーフディレクターの村橋直樹さんに相談して助言してもらった。

「日本の演技スタイルに合わせたほうがいいと思っていたのですが、村橋さんに西洋の芝居を持ち込んでくださいと言われました。芝居も文化も、西洋と日本の違いは大きいけれど、どんな環境下でも、そこに自分の真実があるかどうかが大事で、自分の真実は必ず持って演じてほしいとおっしゃいました。そういった演技のやり方は世界共通であろうということです」

 ハーンは目が悪かったので、片方の目に白濁したコンタクトを特注して作って装着した。

 撮影に入る前に聖地巡礼もした。

「松江をはじめとしてハーンさんにゆかりのあるいろいろなところを訪ねたことは、演技を深めるうえでとても役立ちました。出雲大社でロケをしたとき、ハーンさんが日本で最初に出雲大社に入った西洋人で、西洋の俳優では僕がはじめてと聞いて、ハーンさんに近づけたような気がしました」