また、この日の登板で大谷の打席に悪影響が出ることはなかった。

 7回には満塁の場面で三塁打を放ったうえに、9回には2ラン本塁打も放って合計5打点をたたき出し、13-7で圧勝する結果をもたらした。

「もはや、あれはユニコーンそのものだよ」

 大谷が登板した1回に捕手を務めた、ドジャースの新人ダルトン・ラッシングが、あらためて驚嘆の様子を見せた。大谷は通訳を通じて答えた。

「全体として、前回の登板のときよりは落ち着いていたかなと思います。今後はもっと投球回数も球数も増やしていきたいですね」

 ロバーツ監督は「一瞬、2イニング目も投げさせようか」という考えがよぎったことを認めたが、結局は事前に立てた通りの計画を貫いた。

 大谷が初めて複数イニングを投げたのは、その次の先発登板となった6月28日、カンザス・シティで行われたロイヤルズとの試合だった。無失点に抑えた2イニングの投球で8人の打者と対戦した。

 初回にボビー・ウィットJr.に単打を許し、マイケル・ガルシアを四球で歩かせたものの、次のビニー・パスクアンティノを内野ゴロの併殺打に打ち取りイニングを終わらせた。

 この併殺打に対する球速は101.7マイルに達し、大谷のMLBキャリア史上最速記録となった。だが、それでも対パスクアンティノに限って言えば、最速ではなかった。大谷はWBCでイタリア代表だったパスクアンティノを相手に102マイルの速球を投じたことがあったのだ。

調子がいいときこそ
不要なリスクを避ける

 この印象的な豪速球2球について、パスクアンティノはSNSで思わず〈何なんだ、あれは〉とつぶやいた。この数カ月後、パスクアンティノは大谷本人に質問する機会を得た。MLB機構の仕事で「選手代表アンバサダー」として、ワールドシリーズ前のメディアデーで直接問いかけたのだ。

「なんでオレが相手のときに限って、豪速球ばかり投げてくるんだ?」

 パスクアンティノは報道陣の輪の中に入り、カメラが抜いている場面で質問を投げかけた。

「なんでなんだ?なぜオレのことをそんなに憎んでいるんだい?」