また、シェマーズが2000年におこなった組織心理学の研究では、リーダーの立場にいる人の自己高揚動機は、自信があるとみなされる行動につながるので、チームメンバーの士気を高め、協力的な雰囲気を作り出すということも議論されています。
実際、上司からの前向きな言動は、信頼感や安心感につながりますが、卑屈な言動は、仕事の意義への疑問を生じさせ、やる気をそいでしまうものです。
他者を貶める言動を続けていると
自己認識が歪む可能性も
一方で、自己高揚動機には望ましくない点も存在します。
過度な自己高揚に基づくような行為は、他者に対してネガティブな印象を与えることがあります。たとえば、自分の能力や業績を誇張し、自分を優位に見せようとするなかで、他者を軽視するような言動や、否定的・攻撃的な態度が出てしまうかもしれません。このようなことが重なれば、協調性に欠ける不誠実な人だという印象を持たれ、信頼を失ったり嫌われたりする場合もあるでしょう。
特に、自己高揚のために他者を貶める言動をしてしまうことには注意が必要です。私たちは、劣った他者と自分を比べることで、自尊感情を維持しようとする傾向があります。
たとえば、自分はあの人よりは「まし」とか、「もっとよくできる」という考えのことで、下方比較とよばれています。これらは、失敗したときや物事がうまくいかないときに、また競争状態で、プレッシャーを感じているときに、つい心に浮かんでしまう考えで、日常的に経験されるものです。
しかし、これらの考えは、心の中で思っているだけならまだしも、他者に知られてしまうと、評価を下げてしまいます。自分の問題を認めず逃げているという印象を与えたり、傲慢な人だとみなされたりしかねないのです。
『「気が利く」とはどういうことか――対人関係の心理学』(唐沢かおり、筑摩書房)
自分の問題を認めず逃げているという点は、他者にそう思われることによる問題だけではなく、自己高揚が自己欺瞞につながる可能性を持つという問題もはらんでいます。
自分を実際以上に優れた人だと思い込むことは、正確な自己認識を歪めます。それにより、対応すべき課題を見逃したり見誤ったりし、対処が遅れたり、できなかったりするかもしれません。また、課題に対応する能力を獲得する機会を失うことで、長期的な成長や発展が妨げられるリスクも考えられます。
これらの議論は自己高揚を否定するためのものではありません。自己高揚的な動機が、私たちに与える影響を知り、うまく付き合うことが重要です。







