売却価格がローン残高を下回ると
簡単には売却ができないが…
――任意売却でオーバーローンの場合、どのようなメリット・デメリットがありますか?
加藤智崇弁護士:今回のケースのように、売却価格がローン残高を下回る「オーバーローン」の状態では、簡単には売却ができません。通常は抵当権が残っている不動産を購入することは購入者側のリスクですので、家を売却するにあたり、銀行に借金を全額返して「抵当権(家を担保にする権利)」を抹消してもらう必要があります。
しかし、オーバーローン状態では、売却しても債務全額を弁済できませんので、足りない分を現金で用意するといったことが必要になります。
とはいえ、すでにご自宅を売却するような悪化した収支状況であれば、足りない部分を現金で用意できないことが通常でしょう。そうすると、この方法は使えないかというと、そうでもありません。
金融機関も、債務者が破産して住宅ローンの回収ができなくなるよりは、任意売却後の残債務について弁済してもらえるのであれば、そちらの方が、経済的合理性がありますので、適切な弁済計画で合意することを条件に、抵当権の抹消・任意売却に応じてもらえる場合もあります。
また、弁済計画の一環としてリスケジュールを行い、当初の約定弁済の条件を緩和することもあります。
任意売却ができず
破産申し立て・民事再生になるケースは?
加藤智崇弁護士:このように、住宅ローンの支払いができなくなる見込みがあるのであれば、早期に銀行と適切に協議をして、任意売却を行い、残った債務も滞納せずに弁済できれば、信用情報機関に事後情報として登録されずに解決できます。
ただし、すでに長期間住宅ローンの滞納をしている場合や、任意売却後に残る債務が多く、他に消費者金融等で形成している債務も多い場合には、銀行との間で弁済計画を協議することが困難です。弁護士が介入して破産申し立て、あるいは民事再生といった裁判所を利用した手続きを行っていく必要があります。
ブラックリスト入りすると
5~10年間は新たな信用取引が困難に
加藤智崇弁護士:弁護士からの介入があると、信用情報機関に「異動情報」が登録される(いわゆるブラックリスト)ため、諸手続きの終了後、取り扱う信用情報機関にもよりますが5~10年間は、異動情報が残ります。新たな信用取引は極めて難しくなります。また、その後も新たな信用取引が難しくなるリスクがあります。
武史さんと美和さんに異動情報が登録されたかはわかりませんが、もしも記録されていると、その後しばらくは生活に不便さが付きまとうことになります。
引っ越しの際の審査にも影響する可能性もあるため、早期に銀行や親族の協力が得られるようにあらかじめ相談しておきましょう。
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ペアローンは、二人の収入の合算によって組むローンです。だからこそ、離婚を選択するときには、双方の借金として認識したうえで、離婚とともに解決を図っていく必要があります。今回のように任意売却で残債を確定させ、分割返済に切り替えることは、「終わりのない不安」から抜け出すための一つの方法です。
※プライバシー保護のため、
(監修/加藤 智崇(かとう・ともたか) 弁護士。2010年に島根県立松江北高等学校を卒業後、東北大学法学部へ進学。2017年に東北大学法科大学院を修了し、同年司法試験に合格。弁護士法人山陰リーガルクリニック出雲事務所所属)
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