編集者個人が行ったことであり、上層部がこれをどこまで把握・容認していたかは今の所不明とはいえ、過去に何度か問題を起こしている小学館だからというのもあって、組織的なガバナンスのあり方が世間に問題視された。

 小学館はそこをやり玉にあげられているが、世間の嫌悪感をすさまじくブーストさせたもうひとつの要素は、栗田氏が行った加害行為の内容や卑劣さ、そして裁判中に幾度も笑うなど、深刻なPTSDを患うまでに至った被害者に対して謝罪も反省もない態度が報じられたことにあった。

マンガワンに作品掲載の作家が
自作の配信停止や契約解除

 これを受けてマンガワンに作品を公開している作家が数十名単位で自作の配信停止や契約解除を表明、なんらかの対応を発表した作家は100名以上にのぼるとも言われている。

 日本漫画家協会もすぐ反応して、「本件は漫画界全体に関わる課題」という内容を含む重い声明を発表している。

 なおこの話のあとに「マンガワンにはもうひとつ大きい火種があって、文春がリークを進めている」という噂があったのだが、3月2日、マンガワンから、実はもうひとり性犯罪歴のある原作者をペンネームを変えて起用していたと趣旨の発表があった。

 世間はこれを「文春にリークされそうになったからその前に言っただけで隠ぺい体質が根本にある」と評したが、そのもう一人の方は執行猶予期間の満了や、本人の反省の意志、専門の心理士との相談などを経たのちの起用となっているので、「栗田氏と同列に論じられるべきではない」と見る向きもある。

 まず最初に断っておくが、本稿は性加害や人の尊厳を踏みにじる行為を一切容認する気はない。その前提の上で「作品の価値は作者から独立しているか」という命題に対して、どのような考え方があり得るかを模索していきたいと思う。

 また、マンガワン連載作家が各々リスクを冒して意見表明や自作の配信停止などをしている勇気に敬意を表すると同時に、マンガワン連載作家にとって沈黙が暗に非道徳への加担と捉えられかねない現況に憂慮してもいる。