強制加入だからこそ
全員が得をする

 同じことは、民間の個人年金にも当てはまります。これまでに行われてきた調査によって、こうした民間の個人年金に加入している人々は、平均的な寿命よりもかなり長生きであることが知られています。

書影『入門 社会保障の経済学』(鈴木 亘、新世社)『入門 社会保障の経済学』(鈴木 亘、新世社)

 これは自分が早死にするだろうという情報を持っている人々が個人年金に入らず、長生きするだろうという情報を持っている人々ばかりが加入していることを示唆しています。実際、販売されている個人年金はかなり割高な保険料となっています。

 この時、政府がリスクの高い人も低い人も強制的に全員加入しなければならない公的年金を設立すると、状況はどのように変わるでしょうか。民間が運営するよりも当然、保険料が低く設定されますから、まず、リスクの高い人にとっては大変望ましいことです。

 一方で、リスクの低い人にとっても、民間では割高な個人年金しか存在せず、これまで個人年金に入りたくとも入れず、リスクに晒される状況だったわけですから、公的年金に入れるようになることは(ある範囲内では)望ましいことです。つまり、政府が強制的に公的年金を運営することによって、全員を望ましい状況に変えることができます。

 民間が運営するよりも効率的に運営できるからこそ、政府による社会保険の設立が正当化されるのです。