高所得者は支払った割には年金額が少なく
低所得者は見合わないほどの年金額
我が国の世間一般、あるいは行政や社会保障の専門家の中にも、社会保険は、所得再分配政策だと思っている人が多いようです。なぜならば、受益の分だけ保険料負担を行うという応益負担の原則をとっている民間保険とは異なり、社会保険の保険料は、所得が高い人ほど多く負担する応能負担の原則をとっている場合が多いからです。正確には、医療保険が最も応能負担の色彩が強く、介護保険、年金の順に応益負担に近づきます。
ただ、たとえ年金であっても、高所得者は高い保険料を支払った割には年金額が少なく、低所得者は払った保険料に見合わないほど多くの年金額を得られますので、公的年金を通じた所得再分配が行われています。また、医療保険や介護保険の自己負担率(高額療養費制度を含む)も、所得が高いほど高くなっています。
社会保険を所得再分配政策と考えるのであれば、所得再分配は政府にしか実行できませんので、社会保険を政府が運営するのは当然という理屈になります。
しかし、経済学の立場から言うと、社会保険で所得再分配政策を行うことは全く望ましくありません。なぜならば、社会保険の保険料は、基本的に勤労者の賃金をベースに徴収されており、資産がほとんど考慮されていないからです。
さらに言えば、年金額や金融所得もあまり考慮されていません。このため、例えば高齢者や資産家のように、賃金所得は低いけれど、多額の金融所得や年金を得ている人に、社会保険を通じて所得補助を与えるという逆所得再分配が起きてしまいます。
富める者から貧しい者への所得再分配をきちんと行うためには、累進的な相続税や所得税、生活保護といった所得再分配に特化した政策手段を使うべきで、その方がはるかに効率的です。社会保険は、民間保険と同様に、所得再分配に対しては中立的に、応益負担で運営することが望ましいと言えます。







