より中長期的に国境を越えて移動する移民や難民にも目を向けてみると、国際移住者は推定2億8100万人、紛争や暴力、災害、その他の理由による避難を余儀なくされた国内避難民の数は1億1700万人にも達している。移民の経済活動は世界全体のGDPの1割に相当しており、これはアメリカや中国の割合に次ぐ大きさである。移動は大国と同じだけの経済的影響を、世界に与えているというわけだ。国境を越える移動者をめぐる格差を考え、明らかにする意義が、わかっていただけただろうか。

過去1年以内に一度も地元を出ず
旅行をしなかった人の割合は?

 そこでまずは、回答者(編集部注/全国の2949人にwebアンケートで移動に関する調査を行った)の過去1年間の旅行経験からみてみよう。以降、「過去1年間」という場合は、2023年10月から2024年10月までの1年間を指している。

 はじめに、衝撃的な数字を共有したい。それは、過去1年以内に居住都道府県外への旅行経験がない人の割合が、年収600万円以上の人だと18.2%、年収300万~600万円未満の人は30.7%、年収300万円未満の人は45.6%という調査の結果である。

 つまり、居住都道府県外への旅行をめぐって、年収600万円以上の回答者と300万円未満の回答者で、およそ27%ポイントもの差が存在するのである。

“誰もが観光旅行できる時代”といわれる現代においても、実際には一定以上の距離の移動を伴う観光旅行経験には、年収、社会階層による格差が生じているのである。

海外渡航経験の有無と
年収にはどんな関係があるのか

 国内旅行経験の実態を知ったら、海外渡航経験も気になるところである。2020年以降の移動をめぐる状況は新型コロナの影響が少なからずあり、調査時点では十分に状況が回復していなかった。特に、海外渡航となると避けている人も一定数いると思われる。そこで、これまでの人生におけるすべての海外渡航経験について質問した。