ただしこれだけでは、「なぜ行けなかったのか」まではわからない。そこで、海外に行きたかったけれど行けなかった経験があると回答した人に、理由を聞いた結果が図表7である。金額や時間、仕事の都合で断念した経験がある人が多いという、ある程度想定の範囲内の回答が多くある一方で、それ以外にも「家族の都合」や「移動過程での物理的な障壁」を理由に断念している人が約5人に1人いる実態が浮かび上がってきた。
同書より転載 拡大画像表示
では、海外に行きたかったけれど行けなかった経験は、属性によっても異なるのだろうか。この点について、年収間で顕著な差は確認されなかったが、年収以外に大きく関連する要素が明らかになった。それが「性別」である。
性別ごとの海外に行きたかったけれど行けなかった経験がある回答者の割合は、男性が33.2%に対して、女性は45.0%であった。男女で約12%ポイントの差がある。理由も調べてみると、女性は全体と比較して「金額」と「家族」に関するものが高い傾向があった。特に結婚していたり家族がいたりする場合には、海外旅行に行ける気軽さが男女で大きく異なったり、自分で使えるお金の余裕が異なったりするという自由回答も多くあった。そこには、単純にお金の有無にとどまらない、性別役割分業や日本の雇用形態の問題が影響している可能性が示唆される。
『移動と階級』(伊藤将人、講談社)







