産業能率大学スポーツマネジメント研究所のアンケート(※1)では、「(Netflixとの)契約(加入)予定なし・WBCがどんなに盛り上がっても契約予定はない」という回答が68.0%となった。 

 ロイヤリティ マーケティングの調査(※2)では、WBCの今大会について「無料なら見るが、有料なら見ない」と答えた人が67.0%で、こう回答した人の割合は年代が上がるほど高い傾向があったそうである。

 消費者の中でも野球やWBCに強い関心を持たないライト層は、有料化によってスポーツ観戦から離れていくことがうかがえる。 

稲葉浩志が大会応援ソング「タッチ」を
チェコ戦前に生ライブで熱唱

 昨今のテレビの視聴率の低迷はネット番組・配信、YouTubeなどのコンテンツの分化によって招かれたが、WBCというテレビを媒介にした国民的イベントが有料化したことは、テレビが国民の熱狂を主導してきた一時代が移り変わっていく象徴的な出来事として後年捉えられるのであろう。良い悪いの話しではなく、そういう時代の流れなのだ。

 ただ、そんな中でも熱狂が生まれないわけではない。Netflixが大会応援ソングとして公開した、B’zの稲葉浩志が歌う「タッチ」は往年の名作野球アニメ「タッチ」のオープニング曲をカバーしたもので、これがとにかく絶賛されたのである。

 元バージョンの岩崎良美歌唱のキュートな感じから一転、稲葉浩志の鋭いシャウトとヘビーなロック調で彩られたカバー曲「タッチ」は稲葉浩志のカリスマ性や企画・発想の素晴らしさが炸裂していて、WBC独占配信を巡る議論の中でもこれを評価する声は多かった。

 3月10日のチェコ戦試合開始前には球場に登場した稲葉浩志が「タッチ」の生ライブを初披露し、関連ハッシュタグがすぐトレンド入りしたことを見ればその熱狂の跡が確認できる。テレビとサブスクでは視聴者の母数こそ違うかもしれないが、人々を熱狂に酔わせるエンタメ媒体としての土壌は共に有していると見ていいであろう。

 多くの議論を呼んだWBC独占配信は、WBCというテレビで見る国民的イベントをサブスクという有料の壁を越えた人のみが視聴できるイベントへと変質させた。

 時代の大きな変化が現れているが、しかし同時にスポーツとエンタメが生み出す熱狂そのものが消えたわけではない。視聴の形態だけは変わりながら、人々が同じ出来事に興奮し熱く語り合う文化はこれからも続いていくのだと思われる。

※1 https://www.sanno.ac.jp/news/pressrelease/20260225_01.html
※2 https://biz.loyalty.co.jp/report/184/