また、事実行為については、「会社の事業の執行行為を契機とし、これと密接な関連を有すると認められる行為によって」損害が発生した場合をいうと解しています(最判昭和46・6・22民集25巻4号566頁)。

社有車での交通事故や飲み会の
セクハラでも使用者責任が認定

 例えば、社員が社有車での交通事故を起こした場合、それが業務中の事故であれば「事業の執行につき」に該当することは論を俟ちません。他方で、社有車を会社の業務とは関係なく私用で利用していた場合、私用であるため「事業の執行について」と言えないとも思われます。

 しかし、客観的に使用者の支配領域内の事柄か否かという観点から「事業の執行について」という要件への該当性が判断されます。そして、多くの判例において、肯定されています。

 例えば、運送会社に自動車助手として雇われ、会社の社長から急用の際には会社所有の原動機付自転車を運転することの許諾を得ていて、その鍵を自由に持ち出せる状況にあった社員が、勤務時間終了後に私用のため無断で当該原動機付自転車を運転して事故を起こした事案において、「事故車の運転は外形上その職務の範囲内の行為と認められ、したがって、本件事故による損害は上告人(筆者注:会社)の事業の執行につき生じたものである」と判断しました(最判昭和46・12・21判時658号32頁)。

 また、自動車の販売等を業とする会社の販売課員として普段から仕事の際に会社所有自動車を運転する社員が、禁止されていたものの無断で会社所有自動車を運転して帰宅しようとしたところ、事故を起こした場合に、会社に使用者責任を認めています(最判昭和39・2・4判タ159号181頁)。

社員が犯罪行為で逮捕!会社はどこまで責任を負う?【弁護士が解説】『社員が逮捕されたときに読む本100問100答』(小鍛冶広道、小山博章、宇野由隆、柏戸夏子、金澤 康、労働開発研究会)

 交通事故以外でも使用者責任は認められています。例えば、上司が部下に対し、就業時間後の飲み会の2次会で、仕事の話に絡ませながら性的な嫌がらせ(キスなど)をしたため、被害者である部下が会社に対して使用者責任を追及した事案で、上司の行為は、職務に関連させて上司たる地位を利用して行ったものであるから、事業の執行についてなされたものといえるとして、会社の使用者責任を認めた事例もあります(大阪地判平成10・12・21判タ1002号185頁)。

 なお、民法715条1項ただし書きにおいて、「使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったとき」は、使用者は損害賠償責任を免れると定められています。

 ただし、この規定によって使用者の免責を認めた判例はほぼありません。危険責任や報償責任という考え方からは、容易に使用者の責任を免責し、最終的な負担・責任を被用者(社員)に責任を負わせるのが妥当なものではないことから、上記のように免責事由が認められないという実務上の扱いは正当化されています。