食料の摂取不足を減らす(あるいは撲滅する)には、供給量を増やせばすむわけではないことは、多くの富裕国の低所得者層では低栄養が無視できないほど蔓延している状況を見ればよくわかる。すべての高所得国の1人当たりの食料供給量は、考えうる必要量をはるかに上回っているのに、低栄養と食料不安は解消されていない。つまり食料の供給量よりも、栄養価のある食料を万人がつねに入手できるかどうかが重要なのだ。

 世界有数の食料生産国であり、主要な食料輸出国であるカナダでさえ、子どもの約17%、つまり120万人の子どもたちが、質・量ともに十分な食料を確保できない世帯で暮らしている。

 アメリカは学校の朝食や昼食、フードスタンプの配布などの方策によって、低栄養に対処してきた。また食料不安の高まりから、フランスでは食品価格の上昇を補うために、貧困家庭への給付金の支給を検討するようになった。だが、こうした公的な対策は、それをもっとも切実に必要とする国々には存在しない。そのため、もっとも弱い立場の人々(高齢者、幼い子どもをもつ女性)が経験する固有の問題に応じて配付する世界規模のフードスタンプ制度の確立が提案されている。

 経済的に不利な立場に置かれた人たちへのほかの方策と組み合わせて資格を定め、配付するという案だ。

希望と失望が同居する
アフリカ・サハラ以南

 もっとも大きな希望ともっとも深い失望が、アフリカのサハラ以南の地域に見られる。この地域は食料不足対策をもっとも必要としていると同時に、作物の収量を増加させる可能性がもっとも高い地域でもあるからだ。収量が増えれば、地元への供給量が増え、輸入品への依存度が下がり(多くの国では上がっている)、主食を入手しやすくなる。そしてこの地域は、世界でもっとも収量格差の大きい地域でもある。つまり、特定の作物の世界平均収量とその国の平均収量に大きな差があるのだ。

 近年、アフリカ大陸でもっとも人口の多いナイジェリアの主食用穀物の平均収量は、慢性的な食料不足におちいっているエチオピアをはるかに下回っており(米は1ヘクタール当たり1.4トン対2.4トン、トウモロコシは1ヘクタール当たり2トン対3.3トン)、ブラジルの平均収量(米は1ヘクタール当たり4.6トン、トウモロコシは1ヘクタール当たり5.1トン)の数分の1しかない。