うそは言っていないが
聞かれなかったから言わなかった

 管理職の外部採用においては、特に注意すべきことがあります。候補者に、「うそは言っていないが、聞かれなかったから言わなかった」という状況が起きやすいことです。管理職の場合、応募書類に書かれているのは、自分個人の実績ではなくチームの実績だからです。

 例えば、X社の営業部長のポジションの候補となっているAさんの自己アピールです。

「Z社の支店課長として販売店への営業に尽力し、支店は全国一位の売り上げを達成、支店は社長賞を受賞しました。そのために、○○といった時流をとらえた営業方針を部下に伝え、○○を前面に押し出す顧客アプローチを徹底しました。必要に応じたサポートにも心がけ、部下たちも仕事がしやすかったと言ってくれました」

「これはいい!」とばかりに採用を決めのだが結果は期待外れ。部下との関係は良好なのだが、数字が全く伸びない……。実は、裏には次のような事実があったのです。

 時流をとらえた営業方針を決めたのは自分ではなく上司の支店長。的確な顧客へのアプローチは自分の指示ではなく、優秀な部下たちの個人能力によるもの。自分の役割は、強面の支店長と部下との緩衝材として、部下たちが働きやすい環境をつくったことだったのです。

 X社が期待していたのは、自分で方針を打ち出し、筆頭セールスとしてやってみせながら営業部門を率いる強いリーダーシップでした。もしこのAさんの実態まで掘り下げて確認していたら、Aさんがニーズにマッチする人材かどうか疑問に思ったでしょう。

 ただし、Aさんは決してうそはついていません。チーム全体の成果を話したのであり、自分が方針を決めたとか、自分がアプローチを示したとか、自分が率先して顧客訪問をしたとは言っていないからです。

 このように、管理職の場合、多少の話力のある人なら意図性のあるなしは別として、自分自身の貢献とチームの成果をあいまいにして話すことは可能です。それを採用側が全てAさんの貢献だと勝手に解釈してしまうから、期待外れがなくならないのです。

 では、そのようなリスクを踏まえて、私たちはどのような工夫をしていたでしょうか。