なぜ、人類の進化と共に
派生型が多くを占めるように?
双極症のリスクになるFADS1/2活性の低い型は、人類が誕生した際に持っていた型であるため、祖先型(A型)と呼ばれています。一方、活性が高く、今では欧系人、アジア人で多数派となっている型は、派生型(D型)と呼ばれています。
なぜ、人類の進化と共に派生型が多くを占めるようになってきたのでしょうか?
それには、狩猟採集から農耕生活に変化していったことが関係していると考えられます。FADS1/2活性の高い派生型の人は、植物に含まれるαリノレン酸などの不飽和脂肪酸から、DHAなどの魚に含まれるPUFAを作り出せます。
農耕生活の拡大で穀物などの植物が主食になるにつれて、突然変異により生まれた派生型の人が増えてきたと考えられるのです。
ちなみに、魚を多く摂取するイヌイットは、今も全員祖先型だそうです(おそらく、魚を多く摂取するため、DHAが不足することがないためでしょう)。
PUFAが不足するとなぜ不利なのかは完全には解明されていない訳ですが、双極症を発症しやすいことも多くの要因の1つなのでしょうか。
以前から、魚の消費量が多い国ではうつ病が少ないという関連が報告され、うつ状態にDHA、EPAなどが有効という報告もありましたが、臨床試験成績はあまり一致していませんでした。
DHAやEPAが有効なのは、祖先型の患者さんに限るためなのかもしれません。
しかし、もし、DHAやEPAが不足すると病気になりやすい、ということであれば、人類が農耕を始めてから1万年の間に祖先型が淘汰されてもおかしくありません。
FADS1/2は、DHAやEPAだけでなく、アラキドン酸の合成にも関わっています。
『「心の不調」の脳科学 脳の中で、何が起きているのか』(加藤忠史編、講談社)
アラキドン酸は、炎症を引き起こす物質、プロスタグランジンの元になります。実際、FADS1/2の活性が高い派生型のほうが炎症が起きやすく、動脈硬化が進みやすいと報告されています。
派生型は、DHAなどを作りやすいというメリットから、農耕生活とともに広がったものの、動脈硬化が起きやすいというデメリットをも抱えてしまったということかもしれません。
また、双極症のGWASの結果を他のデータと比較することによって、双極症のゲノム要因が、創造性に関わる職業や学歴が高いことと関係していることが報告されています。
双極症へのかかりやすさには良い面もあるからこそ、この病気が人類の進化の中で綿々と受け継がれてきたのかもしれません。







