微小管は細胞骨格として細胞の形を支え、細胞内の物質輸送のレールの役割も担っています。微小管は、たくさんのタンパク質が集まってチューブを作っています。

 その微小管はタンパク質がバラバラになって壊れる過程と、タンパク質が集まってチューブを作る過程の新陳代謝を繰り返しています。

脳内炎症が続くと
細胞死が広域に広がる

 脳内炎症など何らかの環境変化があると、微小管のタンパク質がバラバラになったときに、タウが過剰にリン酸化され、数百~数千のタウが線維状に凝集して神経細胞の内部に蓄積します。

 そのタウ凝集体は「神経原線維変化」と呼ばれ、神経細胞の興奮のしやすさや信号伝達などの機能に不具合を及ぼし、やがて細胞死を引き起こします。

 脳や脊髄の神経細胞に細胞死が起きる病気を「神経変性疾患」と呼びます。認知症のもっとも頻度の高い原因であるアルツハイマー病も神経変性疾患の一種です。

 神経変性疾患では、細胞死に至る前段階で、神経細胞の機能低下に伴いうつなどの精神症状が現れるケースがあります。

 アルツハイマー病では、脳内炎症が続いてタウ凝集体の蓄積が進み細胞死が広範に広がることで、認知症の症状が現れます。

タウの蓄積量と
症状の重さは比例する

 脳内にタウが蓄積するリスクとなるのは、ウイルス感染や頭部外傷だけではありません。加齢もリスクとなります。つまりタウが蓄積するリスクは誰にでもあるのです。

 細胞の老化によって、微小管を作るタウなどのタンパク質がバラバラになって壊れる過程が加速する一方で、タンパク質が集まって微小管を作る作用が弱まるためにタウが蓄積する、といったことが考えられます。

 精神医学の礎を築いたドイツのエミール・クレペリンは1910年、「初老期精神病の領域は、今日の精神医学全体の中でももっとも不明瞭な領域である」と述べたそうです。

 初老期になって初めてうつ病を発症した「老年期うつ病」の患者さんは、妄想や幻聴など、若い人のうつ病とは異なる症状を伴うことがあります。そのため、同じうつ病でも、若い人のうつ病と老年期うつ病では、発症メカニズムが異なるのではないかと指摘されてきました。