私たちは、中高年で発症したうつ病の患者さんを対象にPET検査(編集部注/アルツハイマー病の原因物質アミロイドβの蓄積を画像化する検査)を行ったところ、半数以上の人でタウが大脳皮質全体に蓄積していることを確かめました。特に妄想や幻聴といった症状のある人ほど、タウがたくさん蓄積している傾向がありました。

 老年期に初めてうつ病または双極症を発症した患者さんの死後脳も調べました。すると、うつ病では50%以上、双極症でも40%以上の人たちでタウが蓄積していることがわかりました。

初老期の気分障害は
認知症の初期症状?

 さらに私たちは、40歳以降にうつ病または双極症を発症した患者さん52名、同年代の健常者47名を対象にPETでタウ蓄積を調べた結果を2025年に発表しました(図7-6)。

図7-6 中高齢の気分障害(うつ病・双極症)患者の脳PET画像同書より転載 拡大画像表示

 健常者群では約15%、患者群では50%にタウ蓄積が認められました。また、認知症の発症よりも平均して7年前に、うつや躁の症状が先行して現れることがわかりました(注1)。

 クレペリンが謎だと指摘した初老期精神病には、タウ蓄積が関与しているケースがありそうです。そしてタウ蓄積は老年期よりも前の中高年期ですでに見られ、それがうつ病や双極症の原因になっているケースもあるようです。

 アルツハイマー病やパーキンソン病など脳内で異常なタンパク質の蓄積や神経細胞の顕著な細胞死が見られる神経変性疾患とは異なり、うつ病などの精神疾患は、異常なタンパク質の蓄積や細胞死などの顕著な病変は見られない、と言われてきました。

(注1)Kurose S. et al., Alzheimers Dement . 21(6):e70195 (2025)