ダイヤモンド半導体の可能性~2インチの壁を越えられるか?
佐賀大学の嘉数誠教授によれば、ダイヤモンド半導体は、現在主流であるシリコン半導体と比べ、5倍の高温で動作し、17倍の放熱性を持ち、33倍の高電圧に耐えるという。これは、冷却装置を簡素化し「小型化」できることを意味する。そして「速い」。シリコンの1200倍の高速特性を持つ。しかも「タフ」だ。放射線に強く、原子力関連施設や宇宙空間といった過酷な環境でも作動する。人工衛星ではいまだ真空管が使われているため、宇宙開発関連業界のダイヤモンド半導体に対する期待は大きい。このダイヤモンド半導体を実現するためには、ダイヤモンドを「ウエハー」サイズまで大きく育てる必要がある。
ウエハー(半導体ウエハー)とは、ニュースの映像でよく見る、虹色に輝く円盤状の物体だ(現在はシリコン製が主流である)。このウエハー上に配線して、メモリーやプロセッサーなどの「半導体デバイス」が作られている。
シリコンウエハー
ウエハーは大きい方が良い。大きいほど、一枚から多くのデバイスを作ることができるからだ。一方、小さすぎると製造工程に乗せられない。現在の製造工程で対応できる最小サイズは「2インチ」である。
これに迫る「1インチ」のダイヤモンド半導体ウエハー(単結晶)を製品化・販売しているのが、日本の株式会社イーディーピーだ。現在、「2インチ」ダイヤモンドウエハー(1インチの素材を4個接続したモザイク結晶)を開発中だという。
日本企業の持つ「CVDによる大型化技術」と、エレメントシックス社の「CVDによる生産体制」により、大粒人工ダイヤモンドが量産できる。ひいてはダイヤモンド半導体ウエハー製造への布石を打てる。これが、日米のシナジーだ。
中国の独占を覆せるか
ところが、今回採用されたのはCVDではなくHPHT方式である。日米がこの分野でどの程度習熟しているかは不透明だ。現在の中国独占状況を覆すのは容易ではない。
日米貿易協定のファクトシート
冒頭で赤沢経済産業大臣が述べた通り、世界の大半の国は人工ダイヤモンドを中国から輸入している。日本の輸入は中国からが60%、「それ以外」(米国・アイルランド・韓国・スイスなど)からが40%とされているが、「それ以外」の国も原料を中国から輸入しているため、実質100%中国依存だ。
現在一時停止している中国の「人工ダイヤモンド輸出規制」は、今年11月10日に実施される見込みだ(2026年2月20日現在)。国内のダイヤモンド商社からは、
「中国製から切り替えることは不可能」
「中国の会社とうまく付き合いながらリスクを減らす」
といった声が広がっている。
中国の輸出規制への備え。将来的に実用化が期待されるダイヤモンド半導体への対応……短期と長期、双方に留意した戦略が、日米両政府に求められている。







