紙媒体で味わえる「ページを繰るドキドキ感」や「指先で紙の質感を確かめる楽しさ」は、デジタル端末では得ることが難しいと感じる人も少なくないのではないでしょうか。
また紙の本で読むと、「あの話、確か本の真ん中あたりで読んだ気がする」「重要な部分は右ページの下にあったな」など、内容とページの位置が自然と頭に残ります。
付箋を貼った場所や、折り目のついたページ、インクの匂いや手触りまで、記憶と結びつく「手がかり」をたくさん作れるのは紙の本ならではです。
そしてこの、紙媒体で五感をフル活用して本と向き合う「没入体験」こそが、実は内容の深い理解や記憶の定着を助けてくれることが、脳科学的にも明らかになっているのです。
紙の本でしか得られない
意外なメリットとは?
紙媒体で文章を読む場合、私たちの脳は無意識のうちに、文章の位置を空間的に記憶していますが、これを脳科学では「空間的ナビゲーション」と呼びます。
いわば、頭の中に地図を作り、その中で情報を整理している状態です。紙の本を読むとき、私たちの脳はまるでGPSのように働くのです。この脳のしくみにより、紙媒体では内容が記憶に定着しやすいのです。
一方で、スマートフォンやタブレットなどのデジタル媒体では、画面のスクロールやリンクのクリックなど、紙にはない追加の操作が頻繁に必要となります。
これにより、情報への注意力が散漫になりやすくなり、その意味を集中して理解することが難しくなります。
また、スマートフォンに頻繁に届く通知は、脳の前側に位置する、物事を整理したり注意を集中させたりする「前頭前野」という部分に負担をかけます。これは「前頭前野の過活動」と呼ばれ、脳が過度に働きすぎて疲れてしまう状態です。
この状態が続くと、集中力や深く考える力が低下してしまい、文章内容の理解や記憶にも悪影響が及びます。
さらに、デジタルメディアが提供する短いテキストや動画、画像などのコンテンツは、脳の「報酬系」と呼ばれる、快楽や満足を感じる部分を頻繁に刺激します。
そのため、こうした刺激は私たちに一時的な満足感を与えてくれるものの、じっくりと深く思考したり冷静な判断をしたりする力を妨げる可能性があるのです。







