こうした研究成果から、コンテンツそのものの「内容」だけでなく、情報を摂取する媒体の「物理的特性」が、人間の認知や学習プロセスに深く影響を及ぼしていることが明らかです。

即時的なデジタルメディアが
読解力や思考力を低下させる

 ここまでの話から、デジタルメディアの普及は、単に私たちから読書時間を奪っているだけではない、ということがお分かりいただけたかと思います。

 より深刻なのは、それが私たちの情報処理能力や認知スタイルそのものを、根本的に変化させつつあるということです。

 心当たりがある方も多いと思いますが、デジタルコンテンツの特性として、見出しや箇条書き、動画のプレビューなどによって、短時間で多量の情報を概観する「スキャン読み」(目で一瞬でスキャンして情報を得るような読み方)が容易に行えるということがあります。

 これは、文章を最初から最後までじっくり読み込む従来の習慣を弱め、情報の一部分だけを選択的に拾い上げる浅い読み方です。

『読書する脳』書影『読書する脳』(毛内 拡、SBクリエイティブ)

 また最近は、検索すれば瞬時に答えが得られ、SNSでもすぐに反応が返ってくるという即時的な満足感に慣れ、それを求める傾向が顕著です。

 その結果として、じっくりと時間をかけて考え、その上で自分なりの結論を導き出すプロセスそのものが、「面倒」あるいは「非効率的」であると感じられるようになっていると思われます。

 このように、デジタルメディアの普及がもたらした情報消費行動の変容は、人々の情報処理スタイルを「即時的で断片的な情報摂取」へと傾斜させています。

 この変化が、深い読解力や批判的思考力など、重要な認知能力を低下させてしまう大きな要因となっているのです。