特に興味深いのは、両者はどのような状況で差がつくか、という点です。
この研究によれば、読書に時間制限がある状況では、紙媒体の優位性がより顕著でした。
一方で、時間制限がなく自分のペースで読む場合には、媒体間の差は小さくなりました。これは、時間的なプレッシャーがかかる状況においては、デジタル媒体では読解力が低下する可能性があるということです。
また、情報的なテキスト(説明的・論述的など)では、紙媒体の方が高い読解力を示した一方で、物語形式のテキストのみを使用した場合には、媒体間に差は見られませんでした。
時間に追われず、リラックスして小説を読むような場合は、媒体による差はそれほど大きくないのかもしれません。
しかし、私たちが普段仕事や勉強で本を読む場面を思い浮かべてみてください。多くの場合、限られた時間の中で、複雑な情報を正確に理解しようとしているのではないでしょうか。
そうした「ここ一番」での真剣な読書においては、紙の本が持つ力が、私たちの思考を強力にサポートしてくれるのです。
五感を使って読むことで
記憶の定着も進んでいく
また興味深いことに、デジタル機器が広く普及した2000年から2017年までの期間において、紙媒体の読書の優位性が時間とともに増加する傾向がありました。たとえ普及が進んでも、デジタル媒体での読書スキルはすぐには向上しないのです。
先ほども述べたように、紙媒体で読書する際には、「〇〇ページの右上あたりに△△という内容があった」というように、内容を空間的に記憶することが可能ですが、デジタル画面ではページの概念が曖昧で、情報の位置を把握することが困難です。
このような空間的な記憶の差異が、紙媒体の方が情報の定着を促進する要因となっています。
さらに、紙の本をめくる際の触覚刺激が記憶の定着を促進するという報告や、紙媒体にメモを書き込んだり、マーカーを引いたりすることが、学習の効果を高めるという指摘もあります。







