この発想を一言で表せば、「アメリカについていく」ではなく、「アメリカに必要とされることでアメリカを使う」である。これはもはや従来型の同盟関係ではなく、先述したように共同経営の関係に近い。

 だからこそ、高市首相はホルムズ海峡問題で全面的な軍事協力を約束しなくても、会談全体を壊さずに済んだのである。

 アメリカから見れば、日本は一つの案件でノーと言うかもしれないが、全体としては、決して失ってはいけない相手になったのである。

カナダとは異なる
日本の地政学的条件

 先述のダボスでのカーニー演説は喝采を浴びた。アメリカの気まぐれに振り回されるのは御免だという感情は多くの国に共有されており、ロシアに融和的なトランプ大統領の姿勢に不安を覚えていた北欧などヨーロッパ諸国が、アメリカ依存からの脱却を示唆するカーニー首相の「中堅国連合」に飛びついたのは理解できる。

 だが、日本がそれを採用するわけにはいかない。カナダと日本では地政学的条件がまったく違うからである。

 日本は東シナ海の緊張、台湾有事のリスク、北朝鮮のミサイル、中国の海洋進出という現実のなかにある。中堅国どうしが結束したところで、米軍の抑止力の代替はすぐにはできない。

 インド太平洋で中国の軍事圧力にさらされている国々は、アメリカの力に代替するものは存在しないことをすでに知っている。高市首相がカーニー構想に冷淡だったことは、対米外交においては大きく寄与した。

 日本に必要なのは、トランプ政権に不快感を示すことではない。不快でも不安定でもなお使わざるを得ないアメリカの強大な力を、いかに日本に有利な形で活用するかにある。

「トランプリスク」があっても
現実主義を選んだ高市首相

 ただし、高市構想に弱点がないわけではない。最大の問題は、アメリカの不確実性を完全には制御できないことである。

 今回の会談でも、トランプ大統領は日本を評価しつつ、同時にイラン戦争への協力を求め、さらに記者とのやり取りでは日本の真珠湾攻撃に言及するという不用意な発言まで行った。