第二に、高市首相が「できないこと」を曖昧にせず、法的制約を含めてあらかじめ整理していたことがある。ロイターは、高市首相が会談後、ホルムズ海峡で日本が何をできて何をできないかをトランプ大統領に説明したと報じている。

 これは外交において思いのほか重要である。日本外交が対米関係で失敗する典型は、曖昧な期待を持たせ、最後に断ることである。高市首相はその逆をやった。先に限界を明示し、そのうえで協力可能な分野では前向きな姿勢を示した。だからトランプ大統領も、日本をNATOと同列には扱わなかったのである。

 第三に、高市首相が国内政治で強い基盤を持っていたことだ。首脳会談は、会談後に予定していた昼食会がキャンセルされるほど長引いた。これは単に議題が多かったからだけではない。トランプ大統領が好むのは「弱い指導者」ではなく、「国内で勝っている指導者」である。高市首相の与党は先の総選挙で大勝しており、ワシントンから見ても「話が通じる相手」だったからだろう。

 高市首相はトランプ大統領に迎合したのではない。日本を「要求を押しつければ従う国」ではなく、「制約はあるが、失えば困る戦略資産を持つ国」として認識させたのである。

 これは、今回の高市外交の最大の成果である。見えざる成果であるゆえに評価されにくいが、最も評価すべき点だと考える。

「対米追随」ではなく
「対米活用」の高市外交

 高市外交において全体的に重要になるのが、その姿勢が単純な対米追随ではない点だ。

 レアアースやリチウムは、半導体、防衛装備、再生可能エネルギーに直結する戦略物資である。これらを日米で押さえることは、対中依存を減らすだけでなく、日本が米国の産業安全保障にとって「不可欠な相手」になることを意味する。

 同盟の受益者から、供給・技術パートナーへと立場を変えるのである。今回の会談でも、重要鉱物と防衛協力が中心議題となり、日本側は具体的な投資や共同開発で存在感を示した。