それに対して、高市首相の戦略は、アメリカと中堅国のあいだの二者択一を迫らない。むしろ、アメリカの力を中核に置きながら、アジアとヨーロッパにわたる広範な経済・安全保障パートナーシップ網を構築しようとするものだと評価している。

 この評価を支えているのは抽象論ではない。

 高市政権が就任直後から打ち出してきた具体的な行動である。

 ロイターによれば、今回の日米首脳会談でも、日米は重要鉱物、エネルギー、防衛分野で協力を深め、共同でのミサイル開発・生産でも合意に向かっている。

 トランプ大統領が対イラン戦争支援を迫るという最悪の条件のなかでも、日本は「何ができて何ができないか」をきちんと説明しつつ、日米協力の基盤を拡大する方向で着地させたのである。

 その結果、アメリカは「日本と一緒に何がやれるか」を共に考える姿勢へと転じている。たとえば、ミサイル開発・生産を二国の協力でやるというのは、アメリカにとって重要な軍事・防衛産業を日本と一体化することと同義だ。

 これは、日本政府の持ち出しが増えるとともに、日本の防衛産業が世界市場に広がるビジネスチャンスを得ることを意味する。

 アメリカにおける日本の立場は、高市首相の手腕によって、単なる「同盟国の1つ」から、経済安全保障における「共同経営者」に格上げされつつあると言って過言ではない。

高市首相がトランプ大統領と
うまくやれた3つの理由

 ここで、冒頭の問いに答えたい。なぜ高市首相は、あれほど難しい局面でトランプ大統領とうまくやれたのか。

 その理由として主に3つが考えられる。

 第一に、高市首相がトランプ大統領に対して、感情論ではなく「価値」を提示していたことだ。

 今回の会談は、単なる安全保障協議ではなかった。重要鉱物、エネルギー、防衛産業、ミサイル共同開発という、トランプ政権が重視する「取引可能な戦略価値」を日本が差し出していた。

 つまり日本は、守ってもらうだけの同盟国ではなく、アメリカの産業安全保障や軍事生産基盤にとって利益をもたらす相手として振る舞っていたのである。