田澤税理士:税務署が現金の存在を把握できる理由は、主に2つあります。

(1)生前の収入と相続財産の"ギャップ"を分析している

田澤税理士:相続が発生すると、税務署は複数の経路から情報収集を開始します。市区町村から届く死亡の通知を端緒に、過去の所得税の確定申告書、保険会社や証券会社から提出される支払調書、KSKシステム(※)などを基に、被相続人がどれだけの収入を得ていたかをおおよそ把握します。

 由美さんの母・茂子さんのように長年にわたって事業を営んでいた場合、「長期間にわたって自営業としてこれぐらいの収入があれば、相応の財産が残っているはず」という推計が成り立ちます。

 それにもかかわらず、申告された相続財産が極端に少ない、あるいは相続税申告そのものがなされていない場合は「財産がどこかに消えている」と判断され、税務調査の対象となる可能性が高まります。

(2)相続人の口座も「調査対象」になる

田澤税理士:多くの人が見落としがちですが、税務調査では被相続人だけでなく、相続人全員の銀行口座も確認されます。税務署は金融機関に対して口座情報の開示を求める法的権限を持っており、銀行はこれを拒否できません。

 現金で山分けをしたとしても、その後に銀行口座へ入金した時点で記録が残ります。相続発生後の同じ時期に、きょうだいそれぞれの口座へ同額が入金されていれば、調査官は遺産の山分けを疑ってしまうでしょう。

(※)KSKシステムとは:国税庁が全国の税務署をネットワークでつなぎ、納税者の申告内容や納税状況、財産情報などを一元管理している基幹システム。税務署はこのデータを基に、税務調査の対象選定や相続税の申告が必要になりそうな人の把握などを行ってる。税務行政の中心となる情報管理システムで、現在は次世代システムへの更新も進められている

タンス預金はそもそも危険
財産管理の方法は見直しがおすすめ

――タンス預金は相続税の申告漏れのリスクもあるとされます。では、それ以外にはどのような危険性があるでしょうか。