友好国イランへの攻撃に対し
中国が米国を非難しない事情

 実際は、東アジアでも憂慮すべき事態が続いている。昨年11月の台湾有事と存立危機事態に関する国会での高市発言以降、中国の対日姿勢は厳しい。一つには、国内外に向けた宣伝の言葉がいつにまして激しい。広く報道されたのは、「突っ込んできた汚い首は躊躇なく切ってやるしかない」という大阪総領事のSNS上の発言だった。

 だがその他にも、「日本側が武力介入した場合は正面から痛撃を加える」といった脅しもあれば、世界の注目が集まる2月のミュンヘン安全保障会議では、「日本は台湾を侵略し植民地化する野心を捨てておらず、軍国主義復活の亡霊は消えていない」といった面妖な話まで発信された。

 発言者は誰あろう、実際の日本を熟知する王毅外相だ。荒唐無稽な宣伝は逆に信用を落とすにもかかわらず、「日本による台湾統治時代、数十万人の同胞が殺され、鉱物資源や民生物資は狂気じみた略奪にあって、台湾の歴史上最も暗黒な一頁が書かれた」という外交部報道官の発言もあった。

 他方、経済や文化に関わる対抗措置には厳しい面と、いわば「峰打ち」に留めている面がある。中国側は日本人歌手のコンサートを歌の途中で中止させることまでして、文化交流、学術交流や学生交流、地方自治体の交流まで凍結した。

 今年に入ってからは、日本の軍事力向上につながるあらゆるエンドユーザーや用途への軍民両用品の輸出を禁止し、第三国の組織や個人もそれらを日本に転売した場合は法的責任を追及すると発表した。そしてそれに続き、日本企業20社への軍民両用品の輸出を禁止した。

 だが民生用途の場合には影響はないとも言明し、報道によれば、本年1-2月に重希土類やその成分を含む高性能磁石などの対日輸出は減少したものの、レアアース磁石の輸出は前年同期比で9.7%増加した。

 他方、米中関係について言えば、中国側はトランプ訪中に大きな期待を寄せている。3月の全国人民代表大会(全人代)の会期中、王毅外相は米国とイスラエルによるイラン攻撃について中国は何を訴えるのかと記者に尋ねられた。すると王氏は、軍事行動を直ちに停止し、戦火の拡大を防ぐべきだといった一般的な主張を述べるに留まり、米国とイスラエルを非難しなかった。

 さらに、月末に予定されていたトランプ訪中に関しイラン攻撃が及ぼす影響などについて問われると、米中が付き合わなければ誤解を生じ衝突や対抗に向かう、いま行うべきは首脳交流の周到な準備だと答え、積極的に訪中を受け入れる姿勢を示した。

 なぜ中国の日本への対応が言説や交流の面で厳しく、経済の面ではそれほどではないのか。他方、友好国イランが国際法違反の攻撃にさらされているのに、なぜ米国を批判せず、一方的なトランプ訪中延期の申し入れを文句も言わずに受け入れるのか。いずれも、その理由の一端は中国の現下の国内事情にある。