こぶしを振り上げた習近平に
日本がすべきこととは

 他方、景気の悪さは隠しようがない。確かに、AIや自動運転など、多くの分野における中国の科学技術の発展は目覚ましい。全人代で採択された5カ年計画でも、研究開発に投資し得意のイノベーションで経済を引き上げようとする意図が見て取れる。

 だが足元の景気はどうか。昨年のGDP成長率は前年比5%だったとされる。だが税収の伸びは0.8%に過ぎず、物価上昇率はゼロだった。政府は今年のGDPの目標成長率を4.5~5%に設定したが、昨年は平均5.2%だった都市部の失業率についてはそれを上回る5.5%前後を目標値とした。技術の進歩とともに、社会の格差も拡大していく様子が見て取れる。

 この状況下で想定外のイラン攻撃が始まったが、世界経済が受けるダメージは中国が頼みとする輸出に悪影響を及ぼす。

 この状況下で国内の安定を保つには、高性能半導体などの技術の輸入や米国市場の確保のために対米関係を安定させることが重要だ。そして台湾問題に絡んで日本を強く叩く姿勢を国民に示し、求心力としてナショナリズムを活用する一方で、対日輸出規制や渡航禁止は程々にする。それは現実に日中の経済連携が密であり、制裁による損失が中国側にも降りかかるからだろう。

 日本は、習近平が振り上げたこぶしをどう下ろさせるのか。実は中国側には、「高市は日本が台湾を守ると言った」との誤解もある。時間はかかるだろうが、原発処理水の放出に中国が大騒ぎした時のように、国際的な評価を援用しながら誤解を解き、関係安定化の実益を広く訴えていく他はないだろう。

(伊藤忠総研研究顧問 高原明生)