同社CEOの山田進太郎氏は「AIを全ての基盤として組織とプロダクトを抜本的に変えていく」と宣言し、「AI-Native」を会社の中心方針に据えています。100名超の「AI Task Force」が全社の業務を33の区分に分けてAI化を推進したのち、これを全社規模に展開しました。現在は、要件定義から設計・実装・QAに至る、デリバリーサイクル全体のAI-Native化が進んでいるといいます。

「ツールを入れれば変わる」わけではない
変革を続けた組織の構造

 Anthropicやメルカリの事例は、一部の特別な先進企業の話に思えるでしょうか。確かに、現実にはAI推進において大きな格差があります。

 経営コンサルティング企業のBain & Companyが2025年に発表した調査によれば、ソフトウェア企業の3分の2はすでにAIコーディングツールを導入しています。

 問題は、導入企業の中でも「社内の開発者の実際の活用率は低い」ということです。同調査では、4社に3社の割合で「最大の障壁は人々の働き方を変えること」と答えています。変化への抵抗、プロンプト設計の不慣れ、AI出力のレビュースキルの不足。これらは技術ではなく、人と組織の問題です。

「私はエンジニアではない」「うちのビジネスはAIコーディングとは縁がない」という感覚は、特に日本のビジネスパーソンの間では根強いものです。その感覚を単純に否定することはできません。実際、ソフトウェアエンジニアリングの世界でも、2年前までは「AIはまだ本格的には使えない」という感覚を持つ人がそれなりにいたものです。

 しかし今や「Anthropic社内では、AIがほぼ100%書いている」という現実があります。この差はどこで生じたのでしょうか。カギとなるのは、ツールへの習熟度と、業務プロセスの再設計ができているかどうかです。「ツールを入れれば変わる」のではなく、「使いこなせるようになるまで変化を続けた組織だけが変わった」。それがこの1年が示した構造です。