母と対立していた妹へ
内緒にしていた「生前贈与」
実は、母の光代さんは長年交流を絶っていた洋子さんへ、亡くなる2年前に「仲直りしたい」と連絡していたのです。
「姉と比較されながら育って、20代での結婚を機に実家を出てから子どももほとんど見せていなかった。母はそれを気にしていたんだと思います。がんがわかったと、突然手紙が届き、姉に内緒で会いに来るようにと。死ぬかもしれない、と実家へ会いに行ったら現金300万円が用意されていました」
光代さんは、胃がんの治療中に洋子さんに連絡し、お金を渡していたのです。贈与契約書の書面を取り交わすことなく「黙って取っておきなさい」という言葉通りに、洋子さんは300万円を受け取りました。光代さんも洋子さんも、長年のわだかまりを解消できましたが、まさかこのお金が生前贈与に該当するとは思っていなかったのです。
事情を知った税理士は、「お母様が亡くなる2年前に現金をお渡ししたのなら、相続財産に加算されて相続税申告が必要になりますね」と告げました。
生前贈与の
持ち戻しルールとは
ここで問題になるのが「生前贈与の持ち戻し」というルールです。相続税法では、被相続人(亡くなった方)が生前に行った贈与が一定の条件を満たす場合、生前に贈与された財産を相続財産に「加算」して相続税を計算しなければならないというルールがあります。
今回は、光代さんが亡くなる2年前に300万の生前贈与を行っていましたが、「暦年贈与」では死亡前3年以内の贈与が相続財産に加算されます(※2024年1月1日以降の贈与から段階的に延長され、2031年には7年前までが対象となる)。
税理士が洋子さんへのヒアリングを重ね、光代さんの通帳の流れをたどった結果、やはり持ち戻し期間内の贈与であることが明らかになったため、相続財産への加算が必要と判断されてしまい、期限後の申告が必要となってしまったのです。
洋子さんは「贈与と思わなかった、母との約束を守ったことがこのような結果になるとは」と翔子さんに謝罪しました。







