――今回のケースは贈与契約書がなく、生前贈与という認識がなかったようです。

いちよう相続・税務サポート 代表 田澤広貴氏田澤 広貴(たざわ こうき)/税理士。いちよう相続・税務サポート代表。不動産専門税理士事務所にて、相続税申告や不動産オーナーの税務業務に従事。現在は相続税・不動産に関する税務を中心に、幅広い相談に対応している。複雑になりやすい相続・不動産の税務をわかりやすく整理し、依頼者にとって納得感のある提案を心がけている。

田澤税理士:今回の事例が示すように、渡した側も受け取った側も「贈与」という認識を持っていないケースは珍しくありません。

 例として、「親から生活費をもらっていた」「老後の世話をする代わりにお金を受け取っていた」――こうした家族間の金銭移動も、本件のように一定の範囲を超える場合、税務上は贈与と判断されることがあります。

 贈与契約書がなくても、被相続人名義の通帳の入出金記録などによって税務署は情報を把握しており、「お知らせ」や「お尋ね」を発送してくるケースは決して少なくありません。

 贈与なんてしていないと思い込まず、被相続人の通帳の動きや生前受け取ったお金について税理士に相談するなどし、申告漏れが起きないように注意しましょう。

「知らなかった」では済まされない
生前贈与と相続の深い関係

――生前贈与の持ち戻しには、どのような注意点があるでしょうか。

田澤税理士:2024年の税制改正により、暦年贈与の持ち戻し期間は現行の3年から段階的に7年へと延長されています。(2031年1月1日以降の相続から完全適用)。これにより、相続発生時に持ち戻しの対象となる贈与の範囲は今後さらに広がっていくでしょう。

 相続財産の総額が基礎控除を下回っているように見えても、生前贈与が絡めば申告対象となるおそれがあります。「自分には関係ない」と思っていた方こそ、相続税申告の期限を迎える前に、専門家に相談されるのがよいでしょう。

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