カタチのみえないプロジェクトが、6年も続いたワケ
――仲間の心を動かすのは、ビジネスプランじゃない

なぜ日本初の「学校づくり」に仲間が集まったのか?<br />――仲間は理論ではなく情熱に集まる<br />【ISAK代表理事 小林りん】<br />×ビズリーチ代表 南壮一郎】(前編)南壮一郎(みなみ・そういちろう)
1999年、モルガン・スタンレー証券に入社。2004年、幼少期より興味があったスポーツビジネスに携わるべく、楽天イーグルスの創業メンバーとなり、初年度から黒字化成功に貢献。2007年、株式会社ビズリーチを設立。エグゼクティブ向けの転職市場に特化した、日本初の個人課金型転職サイト「ビズリーチ」を運営。2010年、プレミアム・アウトレットをイメージしたECサイト「LUXA(ルクサ)」を開始。2012年、ビズリーチのアジア版「RegionUP(リージョンアップ)」をオープン、2013年2月、IT・Webスペシャリストのための仕事探しサイト「codebreak;(コードブレイク)」ベータ版をオープン。

 このプロジェクトに共感し、集まってきた仲間がたくさんいらっしゃいます。でもISAKは、土地も建物もないゼロからのスタートだったわけですよね。そんななかで思いを訴えていくにあたり、大切にしたのは何だったのでしょうか?

小林 私、原体験ってすごく大切だなって思っていて。机上の分析でこういうニーズがあるとか、マーケットシェアがどうだとかいう理論はいろんな人が言えるけれど、それでは人は動かないんじゃないか。最終的にはそういった理論はともかく、根底に流れている強い情熱とか使命感に人は揺り動かされるんじゃないかと思っています。

 私が帰国したのは2008年の8月で、今は2013年の夏。学校ができるのが来年だから、実際にモノができるまでに6年もかかっている。ベンチャー企業だったら考えられないスパンの話ですが、みんなはどれだけ私たちが学校づくりに心血を注いでいるのかという本気度をシビアに見ていて、共感してくれているんだと思うんです。

 会社の起業だって失敗する人のほうが多いわけだけど、難局を乗り越えられるかどうかの分かれ道って、その人が頭で考えているか、心で絶対にやり遂げると信じているかの違いだけだと思うんですよね。底を這いずり回りながらも前に向かって進む人かどうかを、周りの人は直感的に判断していると思うんです。

 これまでの5年間で一番「底」を打ったのはいつですか?

小林 何回も打ってるけど(笑)、最初の2年間はずっと底を這ってた感じがしますね。一番苦労したのは財政面。2008年の8月に帰国して、翌月にリーマンショックがあったから、ファンドレイジングという意味では最悪で。実態の経済からして大変だったから、寄付なんてする余裕がある人はいなかった。世界中に先行き不透明感が漂っていたし。しかも、私たちには目に見えるプロダクトは何もなくて、「学校を作りたいんです!」っていう夢しかなくて。

 ただ、仲間は最初から増えていったんです。「日本の教育は変わらなければいけない」とか、「教育ってこうあったらいいよね」というイメージはあっても、それを具現化した学校をゼロから作ろうという試みは珍しいですよね。だから、ダメ元でちょっと加担してみようかなという人が初期段階からたくさん集まってきてくれて。その人たちに支えられてここまで来たっていう感じですね。