そのようなタイプは、就職してから突然対人不安に悩まされるようになったわけではない。学生時代、あるいは子どもの頃から、初対面の相手やそれほど親しくない友だちと一緒の場で、「何を話せばいいんだろう」「場違いなことを言ったらまずいな」「好意的にみてもらえるかな」などと不安になったはずである。
仲良くなった友だちに対しても、「自分と一緒にいても楽しくないんじゃないか」「飽きられはしないだろうか」などといった不安に脅かされることもあったのではないか。
このような対人不安の心理について授業で話すと、多くの学生が自分も対人不安が強いタイプだといって相談に来たりする。しかし対人不安というのは、アドバイスによってなくなるようなものではない。
対人不安をなくそうとするより
特性のメリットに目を向ける
そこで大事なのは、対人不安のメリットを教えてあげることである。それによって気持ちが萎縮せずに済むし、気持ちに余裕をもって人と接することができるようになる。
では、対人不安のメリットとは何か。それは「不安の効用」(編集部注/不安が仕事の質を高めるなど、不安があるほうがないより好ましい結果につながりやすい)に通じるものである。
心理学者のチビ=エルハナニたちは、対人不安と共感能力の関係を検討する調査と実験を行っている。その結果、対人不安の弱い人より強い人のほうが、他者の気持ちに対する共感性が高く、相手の表情からその内面を推測する能力も高いことが証明されている。
対人不安が強い場合、自分の言葉を相手がどう受け止めるかが気になってしようがない。そこで相手の反応に注意を集中する。そして、失礼にならないように細心の注意を払いながら自分の出方を決めていく。相手がどんなことを思っているのか、何を期待しているのか、気分を害していないかなど、相手の心理状態に用心深く注意を払うため、相手の気持ちを配慮した適切な対応ができるのである。
『すぐに「できません」と言う人たち』(榎本博明、PHP研究所)
一方、対人不安があまりない場合は、相手がどう受け止めるか、どんな気持ちになるかなどを気にせずに、思うことをストレートにぶつけたりするため、相手の気分を害したり、傷つけたりして、人間関係をこじらせてしまうことがある。
コミュニケーションが苦手だという人は、軽い雑談で場を盛り上げる能力がコミュニケーション力だと思い、自分はコミュニケーション力が低く対人場面が苦手だと思っていることが多い。だが、本来コミュニケーションにとって重要なことは、伝えるべきことをわかりやすく伝え、相手の言うことをしっかり受け止め、さらには相手の気持ちにも配慮しながらかかわることである。
その意味では、対人不安が強いことはけっして弱点ではなく、むしろメリットも大きい。このことをしっかり心に刻むように導くことで、対人場面に対する苦手意識も徐々に改善されるだろう。







