感心したかみさんが、「そのやり方はとても効果的だし、本当に教える才能があるね」と褒めたところ、彼は「教え方が上手だなんて初めて言われました」と驚きます。かつての経験はたまたまうまくいったに過ぎないと思っていた彼は、褒められたことで、自分のやり方が普遍性のある方法だと気づいたのです。

 のちに彼は、「あの出来事が自分の大きな成功体験になった」と語ってくれました。

 無口なことが影響したのか、それまでの人生で教員などからほとんど褒められたことがなかった彼は、この気づきによって自信をもち、その後の行動がポジティブなものに変わっていきました。希望した企業から内定を得たり、プロジェクト型の授業でリーダーを志願したりするなど、彼はどんどん「キャラ変」したのです。

「あなたのいいところ見つけた」
“盲点の窓”から成長が始まる

 可視化されていなかった本質的な魅力を褒めることは、当人にとって時に人生が変わるほどのインパクトがあるものなのです。

 本人も気づいていないような才能は土に隠れた小さな種で、なかなかわかりません。でも他者からのポジティブなフィードバックでその可能性に気づくと、やがて芽を出し、茎をのばし、花を咲かせます。

 最初から咲いている花を、「綺麗だね」と褒めるのは容易でしょう。しかし、どのくらい成長するのか、どれほどの花を咲かせるのか、まったく未知のところにポテンシャルを見出して光をあてるのです。Giverが目指す褒めの実践は、ここにあります。

 このメカニズムを、「ジョハリの窓」で整理してみましょう。

図3 ジョハリの窓同書より転載 拡大画像表示

 自分についての情報を「自分が知っている・知らない」「他人が知っている・知らない」という2軸で分類し、「自分が知っている・他人が知っている」部分(「開放の窓」)を褒めてあげれば、相手に納得感が生まれます。「頑張りを認められた」安心感です。

 しかしもっと効果的なのは、「自分が知らない・他人が知っている」という「盲点の窓」の領域を褒めることです。