本人すら気づかない美点の多くは、無意識で行っていたことや自然と身についていた価値観などですが、それらを他人から指摘されると気づきとなって、成長の小さな芽が出ます。いったん芽を出せば、本人もそれを意識して行動するようになり、どんどん成長していけます。
褒め合う文化がもたらすのは
ポジティブな空気と信頼関係
誰かを褒める行為は、相手へのささやかなGiveです。組織やチームのなかで互いを褒め合うようにすると、ポジティブな空気感が醸成されていきます。
誰かが小さな貢献をしたら、ひとこと目に「いいね!」「助かったよ」という言葉を口にするよう心がけましょう。
普段から、会話のはじまりで褒めたりねぎらう習慣が定着すると、職場の風通しがよくなり、互いの隠れた美点にも気づきやすくなります。
僕が日本マイクロソフトで出会った優れたリーダーたちは、どんなに込み入ったビジネスの取引や難しい交渉の場面でも、ひとこと目は必ず、「毎日一生懸命働いてくれてありがとう」(First off, I just want to say thanks for all your hard work.)と話しかけていました。
すべてのリーダーがそうだったわけではありませんが、こと「褒め合う文化」という観点で見ると、マイクロソフトは「褒める言葉の量」が圧倒的に多い組織だったと思います。日本と比較するなら、もうプールと琵琶湖くらい量が違う。
そんな文化がなぜ根づいていたのかというと、ある意味、“よき強制力”が働いていたからです。
まだハラスメントが広く社会問題となる以前からすでに、普段の発言からメールの文言に至るまで、ハラスメントする者に対して容赦なく対処する(即時解雇する)仕組みが機能していたのです。そんなルールが徹底していたことで、褒め合う文化がより醸成されやすくなっていたのでしょう。
いま思えば先駆的な仕組みですが、大人として常識ある振る舞いをし、互いにリスペクトして仕事をすることが当たり前になっていたのです。
ちなみに松下幸之助の有名なエピソードで、社員からどうしようもないアイデアが説明されたとしても、最初に必ず、「あんさん、それおもろいな」と言っていたというのがあります。「で、どうやってやるんや?」と尋ねて、やり方が固まっていない提案は出直しになったという。
尾ひれが付いている伝説かもしれませんが、どんなときもいったん肯定の言葉で受け止めるのは、さすが「経営の神様」のコミュニケーションです。
ひとこと目に「いいね」を伝える
「グッドもっと」の基本原則
ひとこと目に「いいね!」を伝えることは、僕の盟友で、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部学部長の伊藤羊一さんが推奨されていることでもあります。
『The Giver 人を動かす方程式』(澤円、文藝春秋)
彼は、他人に対してレビューするときは、「グッドもっと」でやろうといっています。
相手のよかった点を「グッド」(いいね!)と指摘し、さらに改善できる点を「もっと」(~したほうがいいよ)とフィードバックする手法のことです。かつてはヤフー株式会社(現LINEヤフー株式会社)でも推奨されていました。メンバーのやる気と改善への意欲を高める効果があります。
ポイントは、「グッドバッド」(いいけど、でもね)のように、否定的な表現を使わないこと。よく「いいね」といいながら、結局はダメ出しばかりするケースが見受けられますが、「それはいいね、もっと良くするにはどうすればいいかな?」と、あくまで「いいね!」を前提にしてください。そのうえでさらに改善していくためのアイデアを探る姿勢が大切です。







