辞める前にできる選択肢と相談先

カタリーナ「それにね、企業がこういう状態を放置すると、従業員の心身の健康を守る“安全配慮義務”を果たしていないと評価されることもあるの。メンタル不調が悪化すれば、会社側が責任を問われるケースもあるわ。だから本来は、あなたを守る仕組みを整えるのが会社の役目なのよ」

さやか「そうなんですね」

カタリーナ「辞めたいって思うのは自然よ。でも、辞めるのは最終手段でいいと思うわ。その前に、会社にカスハラの記録を提出して、配置転換や業務量調整の相談をしてみて。通院している心療内科の意見書も持っていった方がいいわね」

さやか「でも、今の上司では……」

カタリーナ「ハラスメントの相談窓口を利用してみて。これは、決してわがままじゃなくて、正当な権利よ」

さやか「でも、そんなことをしたら……」

カタリーナ「大丈夫。個人情報はきちんと扱われるし、上司を責める話でもないの。会社の仕組みが整っていないだけ。だからこそ、声を上げることが大事なのよ」

さやか「そうでしょうか…?」

カタリーナ「えぇ、あなたのためにも、職場のためにもなるはずよ」

 さやかは、頷きながらにじむ涙を拭いた。

さやか「…はい、勇気を出して相談してみます。私も……守られたいです」

カタリーナ「その気持ちを大事にしてね」

<カタリーナ先生からのワンポイント・アドバイス>
●労働施策総合推進法の改正により、2026年10月から職場におけるカスタマーハラスメント防止のための雇用管理上の措置を講じることが事業主に義務化される。法律上は、次の3つの要素をすべて満たすものがカスハラとされている。
(1)顧客、取引先、施設利用者その他の利害関係者が行う
(2)社会通念上許容される範囲を超えた言動により
(3)労働者の就業環境を害すること

●労働契約法第5条では「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」という安全配慮義務を課している。

●労働安全衛生法は、企業に労働者の心身の健康保持のための措置を求めており、強いストレス要因(暴言・威圧など)を放置しないことが求められる。

●安全配慮義務を怠り従業員がメンタル不調となった場合、民法415条に基づき企業が損害賠償責任を負う可能性がある。

※本稿は一般企業にみられる相談事例を基にしたフィクションです。法律に基づく判断などについては、個々のケースによるため、各労働局など公的機関や専門家にご相談のうえ対応ください。

(社会保険労務士 佐佐木由美子)