それでその製品をコストに応じて値上げできるでしょうか?するのは自由ですが、値上げをすることで最終製品の売り上げは必ず減少します。

 たとえばユニクロのエアリズムのインナーの通常価格は1290円ですが、これをポリエステル素材のサーチャージに応じて1390円にし、さらに夏頃に原油価格がピークになるとした場合、夏の価格は1590円にするとします。そんなことをすると商品が大量に売れ残ってしまいます。最終的に790円の値下げをしないとさばききれないでしょう。

 ですからサプライチェーンの川上で起きたサーチャージ分の値上げは、その多くがサプライチェーンのどこかで吸収されることになります。その場合、可能性が一番高いのは実はサプライチェーンの鎖の中で一番弱い中小零細企業です。原材料価格は即値上げされますが、納入価格はほぼほぼ固定されてしまいます。

 要するに問題は2つあって、ひとつはサプライチェーンで応分に分担しようとしたサーチャージというリスク価格が、すべて最終消費者にいくわけではないということ。そしてそのリスクのかなりの部分は中小事業者が背負うことになるということです。

 振り返ってみればサーチャージ導入以前の商慣習では、原油相場などの国際相場リスクは巨大企業が負担してきました。つまり巨大企業だからこそ負担できる体力があったということです。

 そのリスクを新手法で川下に流すというのがサーチャージの本質です。そして結果起きることは中小企業の疲弊だとしたらどうでしょう。日本の会社員人口の7割は中小企業で働いています。オイルショックが起きてサーチャージに見舞われる未来では、中小企業は賃上げどころの話ではなくなるでしょう。

 そうなると賃上げによる日本経済の成長シナリオが止まります。化学メーカーの経営というミクロの視点でみれば画期的な経営手法も、日本経済全体でみればあだ花として働きそうです。

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