消えた「329億円」はどこへ?
なぜ何年も「循環し続けられた」のか
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ここで一つ、素朴な疑問が浮かびます。架空の取引なのだから、本来広告主からのお金は入ってこないはず。なのに、なぜ何年も回し続けることができたのでしょうか。
架空循環取引では、各社が手数料を抜いていくため、架空の広告案件を回すたびにお金は目減りしていきます。燃料タンクに穴が空いている車のようなもので、ガソリンを補給し続けなければすぐに止まってしまいます。
その「燃料タンクへの補給係」となったのが、KDDIからビッグローブへのグループファイナンス――親会社から子会社への資金の貸し付けでした。広告事業を始めたばかりだから資金が要る、という名目で、その枠は最終的に830億円にまで膨れ上がったのです。
KDDIは当然、そのお金が架空取引に使われているなど知る由もありません。結果として、架空循環取引によって、外部に流出した手数料は累計329億円。いわば漏れていた燃料……知らぬ間に持ち出されたお金でした。
では、その329億円はどこに消えたのか。答えは、循環取引に加わっていた外部の代理店です。各社が「手数料」の名目で差し引いた金額の合計が329億円に上るのです。中でも最大の取引先であるC社は、手数料率2.5〜3%で取引総額9174億円。単純計算でも莫大な利益を得ていたことになります。
a氏は、今回発覚した架空取引について、循環の中に入っていた代理店関係者や自身の私的な利益のために行ったものではないと述べています。ただ一方で、調査報告書には、a氏が自分のキャバクラなどの飲食代の領収書をC社の社長に渡し、C社の社長がそれに基づいてa氏に現金を渡していた事実が記録されています。その額は、2年間で累計約3000万円に上りました。
KDDIのお金が、グループファイナンスを通じてビッグローブに渡り、架空取引で外部代理店に流出し、その一部がキャバクラ代としてa氏のポケットに戻ってくる。329億円という巨大な資金の漏れと、3000万円という生々しい現金の授受。規模は違えど、同じパイプラインの上流と下流の話なのです。







