また、広告代理事業において発注および支払いプロセスの権限分離が十分にできていなかったことも、問題の発覚を遅らせた原因の一つと考えられます。
加えて、ジー・プランおよびビッグローブの与信管理の不十分さや、取引の実在性に関する確認不足なども指摘されました。
ジー・プランでは内部監査チームが設置されていましたが、担当はわずか1人でした。そうしたリソース不足もあり、2024年度に広告代理事業の納品書が発行されていないという指摘があった時にも、踏み込んだ調査は実施されなかったようです。
きっかけは「社長の違和感」
監査法人も不自然さを指摘
この状況に最初に風穴を開けたのは、意外にもKDDI本体のトップでした。
25年2月、当時のKDDI社長であった高橋誠氏(現会長)が、経営戦略会議の場で広告事業の急成長に対して「コンプライアンス的に問題ないか」と違和感を表明したのです。
これを受けて、社内の監査役や内部監査部門が動き出しました。ただし、この段階での社内調査では不正の発見には至りませんでした。a氏が代理店G社と口裏合わせの会議を開き、想定問答集まで作成して調査をすり抜けたからです。その記録がチャットワークにしっかり残っていたというのは、なんとも皮肉な話です。
25年10月には、会計監査人であるPwCからも取引の不自然さについて指摘が入りました。
PwCは下流広告代理店であるH社の有価証券報告書に、上流のC社への買掛金が記載されていることを発見しました。本来、ジー・プランからH社へ流れた仕事が、なぜかH社からC社(=ジー・プランへの発注元)に戻っている。これはお金がぐるぐる循環している証拠に他なりません。
調査報告書を基に筆者作成拡大画像表示
では、何が最後の引き金を引いたのか。それは「お金が止まった」という、極めて単純な事実でした。
25年11月、KDDIは広告代理事業の取引金額が当初計画よりも拡大していたため、ビッグローブに対して広告代理事業の取引金額を抑制するよう指示しました。これにより、循環取引の要であった資金が絞られました。つまり、燃料タンクへの補給が止まったのです。
たちまち資金繰りが行き詰まり、12月には上流代理店からの入金が約107億円不足する事態に。もはや取引を回し続けることが物理的に不可能となり、a氏は自ら架空取引を認めました。







