これに関してはさまざまな専門家が指摘をしているが、企業危機管理に長く携わってきた立場で言わせていただくと、「KDDIの異常なガバナンス」によるところが大きい。

 今回の不正の舞台になったビッグローブはルーツをたどればNECグループだが、2017年1月にKDDIの100%完全子会社となり、そのタイミングでKDDI執行役員の有泉健氏が代表取締役になって2023年3月末まで務めており、ビッグローブ、ジー・プランにはKDDIから「グループ・ファイナンス」という形で大量の資金が送り込まれていた。

 一方、不正がスタートをしたのは、遅くとも2018年8月、aが主導して立ち上げた広告事業は低迷していて、ジー・プランの役員から「撤退」をちらつかされていた。そんなとき、数十万円規模の赤字発生及び数千万円単位の売り上げ目標未達が見込まれてしまう。

 そこで自分の責任を問われ、社内の居場所を失うことを恐れて、親しい広告代理店に協力を依頼して循環取引を始めたことをきっかけにのめり込んでいく。そして、2020年にはbが合流する。

 bは早い段階で取引の上流と下流の広告代理店が同じなどの不可解な点を上司であるaに問いただしたが「売り上げをつくる仕組み」「悪いことはしていない」「詳細は考えないでほしい」「気にしないでバカになれ」などとはぐらかされて指示に従ってしまう。

 一度そうなると「共犯者」なので、周囲に相談をしてしまうと自分の責任も問われるし、何よりもこの秘密を知っているのは2人だけなのでaにチクったことがバレてしまう。そういう葛藤も抱えながら不正に関わっていたという。

 その後、KDDIの通信障害での謝罪会見が「神対応」と絶賛された高橋誠社長が2025年2月、経営戦略会議でビッグローブの広告事業が大きく伸びていることに「コンプライアンス的に問題ないか」と懸念を示した。これをきっかけに内部監査が行われ、監査法人からもジー・プランの架空循環取引の疑いが指摘されたが決定的な証拠をつかむことができなかった。

 結局、取引額を抑えられたことでジー・プランへの循環が滞ってしまったことを受けて、2025年12月15日、a自身が同社の社長に循環取引について白状したことで、ようやく7年間にわたる不正行為の存在がわかったのだ。

 つまり、このような「社内地面師」ともいうべきモラルハザードを生み出してしまったのも、大胆すぎる不正行為を7年間も見逃してしまったのも、すべてはKDDIグループのガバナンス下でのことなのだ。