報告書に頻出する
“それっぽい原因分析”
調査報告書で「原因」として繰り返し登場をするのが「広告代理事業に関する経験や知見を有する者がいなかった」という表現だ。
不正の舞台となったビッグローブはプロバイダ事業がメインだし、ジー・プランもポイント事業、監督するKDDIも通信会社であって、広告事業は「門外漢」であり、しかも「傍流」の事業だったので経営幹部もaとbにやりたい放題やらせてしまって、不正に気づくことができなかったというのである。
ただ、もし本気でそんな言い訳をしているとしたら、かなり異常なガバナンスだと言わざるを得ない。
傍流だろうが、門外漢だろうが、急成長している事業なのだから普通はその事業を安定的な成長もっていくために会社としては体制をサポートする。つまり、 aとbというたった2人の専門家に全権を委ねたままにせず、「広告代理事業に関する経験や知見を有する者」を役員や新戦力として招き入れるのだ。
しかし、調査報告書ではそういう事実はなく、この急成長事業はaとbの2人っきりという異常な属人化が進み、しかもそれを変える動きも一切なく「聖域」にされていることがわかる。
「ジー・プランにおいては広告代理事業に関して人事ローテーションは行われておらず、a氏及びb氏以外の従業員が当該事業に中心的に従事する機会はなかった」(調査報告書89ページ)
この「異常な体制」が「異常な言い訳」を可能にした。調査報告書には、ビッグローブの経営幹部が「広告の成果物」であるバナーが確認できないことに疑問を抱いて質問したところ、aとbはこんなことを言った。
「クリエイティブはノウハウの塊なので、ノウハウ流出を防ぐために仲介する立場の者にも見せない方針である」(調査報告書102ページ)
ドラマ「地面師たち」で本人確認の場で商談相手にいろいろツッコミを入れられて、ピエール瀧さん演じる法律屋が「もうええでしょう!」と逆ギレして押し通したシーンが話題になったが、それを彷彿とさせるムチャクチャな主張である。にもかかわらず、経営幹部はこんなワケのわからない説明に納得してしまう。
いくら「虚業」と揶揄されがちな広告業界でも、中間業者にビジネスの成果物を確認させないルールなどあるわけがない。あったとしたらそれは典型的な「詐欺」だ。こういう一般常識も麻痺してしまうほど、KDDIグループ内は「異常なガバナンス」だったのだ。
企業危機管理を長くやってきて、不祥事企業の内部を見る経験を重ねていくと、これらの組織には共通点があることに気づく。それは本人たちは当たり前だと思っているのだが、はたから見るとかなりゆがんでいる、という「異常な環境」だ。
例えば、今回と同じ時期に注目を集めたニデックも、カリスマ創業者・永守重信元会長による「ハイプレッシャー」に恐れをなした経営幹部らが、永守氏から怒られたくないという一心で不正会計に手を染めてきた、という「異常な環境」が浮かび上がっている。
今回のビッグローブと子会社ジー・プランも方向性はまったく異なるが、こんな怪しい2人を放置し続けて、詐欺師感漂う言い訳で丸め込まれる経営幹部がたくさんいるというのは「異常な環境」であることは間違いない。
広告代理事業に関する経験や知見を有する者がいなかった。業務が属人化してしまって不正を見抜くことができなかった――。
一見すると、もっともらしい言い訳で、筆者も報道対策アドバイザーとして謝罪会見の原稿などで似たような表現を使ったことがある。しかし、本当の病巣はこういうもっともらしい言い訳の先にあるものだ。
なぜ急成長した事業に、経験や知見を有する者をあてなかったのか。ブラックボックスになるような、属人化するような働き方を主導してきたのは誰なのか。そこまで深く突っ込んでいかないと、新規事業の拡大に力を入れているKDDIグループでは、また同じような問題が繰り返されるのではないか。








