グループ内に189も連結子会社があって(2026年3月31日時点)いちいち孫会社までチェックできないなどの言い訳が通用する話ではなく、ガバナンスに大きな欠陥があることは明らかだ。
では、その欠陥とは何かというと「聖域に対する遠慮」である。
わかりやすく言うと、KDDIグループの幹部たちが「自分にはよくわからない専門外の分野だし、なんか面倒くさそうな話だから触るのはやめておこう」と腰が引けて、本来確認しなくてはいけないことを確認せず、「専門家のa」が言っていることなんだから間違いないと自分に言い聞かせて、面倒臭いことから逃げ続けていたことが「社内地面師事件」が7年間発覚しなかった最大の理由なのだ。
調査報告書によれば、KDDIの高橋誠社長以前にも、売り上げが急激に伸びていることを不審に感じて、aに説明を求めた役員や経営幹部はいた。
例えば、2021年度以降、ジー・プランの取締役副社長として広告代理事業を所管する部署の担当役員となった人物はあまりの急成長を踏まえ、「取引の実在性」についてaとbに確認をしようとしたが、aからこんなことを言われて引き下がっている。
「上流代理店の更に上流、又は下流代理店の更に下流の取引先と直接接触すると、既存の代理店を介さずにそれらの取引先と直接取引を行うようになり、既存の代理店が取引から排除されるリスクが生じるため、それらの取引先の存在を把握することはできない」(調査報告書70ページ)
一見すると、もっともらしい話だが、冷静に考えてみたらこんなに怪しい話はない。カネを受け渡しする人間の先は、どんな人間につながっているのかわからないし、確認しようがないというのは、闇バイトや盗難車輸出など裏ビジネスのルールであって、カタギの会社、しかも天下のKDDIグループではあり得ない。
もちろん、どんなビジネスにも商習慣や暗黙のルールはある。しかし、「取引先の存在を把握できない」なんてムチャクチャな話を容認してしまったら極端な話、反社会勢力と取引をしてしまったり、家族につくらせたペーパーカンパニーにカネを流して懐に入れたりしても見過ごされることになってしまう。
直接接触できないにしても、どういう広告クライアントが何社いて、これまで直接取引をしてきた代理店とはどういう付き合いをしているのかなどは代理店を介したり、外部の人間を使ったりして調べる努力をはする、というのがまともな会社だ。
つまり、本来はこんな説明で引き下がるような話ではないのだ。しかし、ジー・プランやビッグローブの経営幹部たちはそこに切り込まない。なぜかというと、彼らはみんな「広告の世界のことはよく知らない」という苦手意識があるからだ。







