トランプ大統領は、わずか約8週間の間に、この2つのエネルギー供給源を同時に標的にした。これは中国経済に直接打撃を与えるだけでなく、長年かけて構築されてきたベネズエラ、イラン両国への投資スキームを根底から破壊する効果を狙ったものだ。

 さらに見逃せないのが決済通貨の争いとしての側面である。ベネズエラもイランも人民元建て決済を導入しており、中国が企図する「非ドル貿易圏」の中核を担っていた。つまり、中国がドル基軸体制への挑戦として構築してきた「脱ドル・インフラ」を根こそぎ破壊することこそが、今回の攻撃の真の目的だったと考えるべきだ。

 体制転換はあくまで付随的な要素であり、本質は中国の「非ドル体制ネットワーク」の解体にある。

中国とロシアが支えた想定外なイランの強靱性

 トランプ大統領の当初の発言からもわかるとおり、アメリカ側はイラン攻撃をきわめて短期間で終結させる青写真を描いていた。事実、イランの防衛網を瞬時に崩壊させ、制空権を掌握することには成功した。

 だが、米軍にとって誤算だったのは、中国とロシアによる「側面支援」の即効性と巧妙さがあったことだろう。

 特にロシアの支援は具体的だった。ウクライナ情報機関の分析(ロイター)によれば、ロシアの衛星は3月21日から31日にかけて中東11カ国の少なくとも24地点を継続的に観測。米軍基地、空港、石油施設など46の目標を詳細にカバーしていたという。

 このデータ提供から数日以内に、標的とされた米軍拠点がイランの弾道ミサイルやドローン攻撃を受けた事実は重い。

 さらにロシアは、ウクライナ戦争で蓄積した「ドローン運用の知見」をイランに逆輸入した。改良型「シャヘド」ドローンの部品供給と戦術指導は、米軍の迎撃網を突破する上で決定的な役割を果たした。

 一方、中国の支援はよりハイテクかつ巧妙だ。フランス情報機関(DGSE)元長官は、「イランが中国の衛星測位システム『北斗』にアクセスしている可能性は非常に高い」と指摘している。

 レーダー探知ではなく、中国のインフラを用いた誘導精度の向上こそが、実質的な軍事支援となった。中国は表向き「中立」を装いつつ、ミサイルの命中精度を飛躍的に高めることで、イランの反撃能力を支え続けた。この中露のハイブリッドな支援により、イランは制空権を失った後も、米軍の空爆に耐え抜くことが可能になった。