イラン攻撃は「AI幕僚」が作戦指揮!?戦場・経営の意思決定が“アルゴリズム化”される危うさイランに対する「オペレーション・エピック・フューリー」作戦中の軍事作戦を監視しながらテーブルに着席しているトランプ大統領=3月2日、ホワイトハウスで Photo:Anadolu/gettyimages

1000カ所攻撃を可能にした「メイブン」!?
AIが幕僚組織の作業をシステム化

 米国とイスラエルによる対イラン攻撃は収束が見えないまま約2カ月がたつが、この間の戦闘での注目点は、攻撃の背後にある意思決定の仕組みが質的に変化しつつあることだ。AI(人工知能)が単なる情報処理の補助を超え、作戦の立案・実行を担い始めている。

 その象徴が、米軍がイラン攻撃の際に使用したとされるパランティア・テクノロジーズが開発した「メイブン・スマートシステム」だ。

 これは単なる情報解析システムではない。膨大な量の各種情報を即時処理し、人間の判断を補完・加速し、意思決定まで支援する「知的インフラ」だ。

 米紙の報道によると、米軍がイラン攻撃の最初の24時間で1000カ所を攻撃したのもリアルタイムで標的や攻撃の優先順位が決めるメイブンの威力が発揮されたという。

 古来、敵・味方の状況把握は作戦立案の必要条件であり、孫子が『兵法』の中で述べた「彼を知り己を知れば百戦危うからず」は、2500年の時を経て現在でも勝利の要諦だ。

 こうした作業は古くは有能な軍師の手に委ねられたが、近代に入ると軍の運用も複雑となり、専門的な教育・経験を積んだ者で幕僚組織が構成される。さらに現代では伝統的な偵察情報や通信傍受に加えて、レーダー・無人機・衛星・各種センサー・サイバー活動などからも、敵に関する情報が間断なく入ってくる。

 これらのあらゆる情報を収集・整理して「最適解」を人手で算出するには膨大な時間を要する。その間にも状況は変化するので、時間をかけて得た解も常に更新を余儀なくされる。ここにAIが導入されることで、標的の抽出、脅威の優先順位付け、攻撃実施時期といった判断が、半ば自動的に行われるようになってきた。

 言い換えると、AIが幕僚組織の作業をシステム化するものだ。

 軍事作戦へのこうしたAIの関与で、個々の攻撃の精度や速度の向上はもちろんだが、重要なのは「いつ、何を、どの順序で攻撃するか」という判断材料の作成主体が変わりつつある点だ。

 これは単なる効率化ではない。人間の知識・経験や直感に依拠してきた意思決定の基盤そのものが、データとアルゴリズムに大きく依存し始めていることを意味する。