浮き彫りになった世代交代の難しさ

 2025年度の九州・沖縄の菓子業者(製造、卸売り、小売り)の倒産は17件に達した。コロナ禍が吹き荒れた2020年度でも14件だったが、それを超えて過去最多を更新した。

 コロナ禍の後遺症が癒えないまま、円安に伴う原材料の高騰に加え、光熱費、人件費、輸送費などの各種コスト高が重なった。また、大手チェーンやコンビニ、後発の土産物も台頭している。絶対的なブランド力がなければ、価格転嫁は難しい。

 ただ、今回の倒産の背景には、老舗特有の遺産相続の問題があった。また、兄弟間の分裂に端を発したブランドの希薄化も大きい。実際、当社の看板商品だった「チロリアン」の商標は訴訟を通じて使用が難しくなり、名称を「ヨーデルン」に変更している。この争いの顛末(てんまつ)は、地元でも大きく報じられたが、このことが商品自体の知名度やブランド価値の棄損を招き、市場での競争力低下に繋がった点は否めない。

 4社に分かれた千鳥屋の経営は、図らずも2つの民事再生を経て、事実上2社による経営に集約されることになった。

 消費者にとっての千鳥饅頭は、これからも福岡を代表する銘菓であることに変わりはない。ただ、千鳥屋がたどった歴史は、老舗企業のガバナンス(統治・管理体制)の重要性、ブランド統一の必要性、そして世代交代の難しさを象徴している。