僕たちが何もせず、意識が内側に向いているとき、このアーティストはバラバラな記憶や感情をゆるやかにつなぎ合わせて、「自分はどんな人間で、どんなものが好きで、これからどう生きていきたいのか」という物語を絶えず紡ぎ直しています。

 僕がDMNを「自分を紡ぐアーティスト」と呼ぶのは、そのためです。

脳のデフォルトの状態は
想像力豊かで自分語り大好き

 ところで、「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という名前を目にしたとき、「このネットワークの何がデフォルト(初期設定)なんだろう?」と疑問に思いませんでしたか?

 実は、このアーティストが働いている状態こそが、僕たちの脳のデフォルトです。というのも、脳内の注意力の切り替え担当のサリエンス・ネットワーク(SN)(編集部注/脳内にある4つの機能のうちの1つ。すべての情報のうち、何が重要かを瞬時に判断する)は、自分の外側で重要な変化が起きたときだけ、タスク処理係のセントラル・エグゼクティブ・ネットワーク(CEN)(編集部注/脳内にある4つの機能のうちの1つ。行動を担当し、計画・実行・効率化などを担う)へ、注意のウェイトを移します。

 これはつまり、特別なことが起きていない限りは、脳のエネルギーは自然と「内側(DMN)」へと向かうということ。

 要は、何かに集中していないとき、脳は常に自分という物語を紡ぎ続けているということです(注2)。僕たちの脳は、本質的に、「自分語り」が大好きなアーティストなんですね。

 そういったわけで、常に自分について考えているデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)は、自分自身についてあらゆることを知っています。

 自分が、どんな瞬間を心地よいと思っているか。大事だと思っているか。愛しいと思っているか。

 そんなものをつなぎ合わせて、「自分がこの先、どんなふうに生きていければ幸せか」も、漠然とイメージしています。

(注2)正確に言うと、何かに集中しているときも、アイドリング状態で待機します。