自分が好きな物を
見つけるコツ

 とはいえ、実際には「自分の好きがわからない」という新人の方も少なくありません。強いて言えば「創作する行為が好き」というだけで、それ以外にピンと来るものがない、という人もいます。次の節では、その「好き」をどう見つけ、どう鍛えていくかを具体的に示していきます。

「自分が好きな物を見つける」という行為は、よく考えてみると少し奇妙です。本来、好きという感覚は、出会った瞬間に自然と芽生えるものですから、努力して探し出す対象ではないように思えます。

 けれども、あらためて「あなたは何が好きですか?」と問われると、多くの人が意外なほど混乱し、簡単に答えられません。

 漫画の現場では、編集者が新人に「まずは自分の好きな作品を書いてみなさい」と促すのが定番です。長い間続いてきた方法であり、「好きな物」を描くことが成功への近道だと考えられてきたからでしょう。

 しかし、この言葉を受けた新人はしばしば戸惑います。「自分はいったい何が好きだったのか?」と迷い、手が止まってしまうのです。

 部活などをやっていた人は比較的簡単に「バスケが好きだった」「サッカーが好きだった」と行き着く人もいます。けれど漫画や映画といった作品が好きで創作に憧れた人はちょっと事情が違ってきます。「好きな作品」をそのままなぞるのは単なる模倣にとどまることになってしまいます。

 こういう人が本当に必要なのは、その作品の奥に潜む「好きな要素」を探すことなのです。

本当の「好き」を探しづらい
現在のテレビ環境

 たとえば、ある人は推理小説が好きでも、実は「謎を少しずつ解き明かす緊張感」や「探偵のスマートな推理」「おどろおどろしい雰囲気」「日常の裏に潜む謎」と、好きと感じる場所は様々でしょう。

 アクション映画が好きでも、「銃撃戦」や「カーチェイス」などの道具を使ったタイプが好きな人もいれば、肉体を使った「格闘」一択という人もいるでしょう。

 同一ジャンルの中でさえ、好きな部分はいろいろ分かれることを意識するだけでも、「好き」の輪郭はずっと鮮明になるのです。