自分が子供の頃の昔のテレビ環境は、この「要素探し」にとても役立ちました。私が十代の頃には、週に4~5本の映画枠があり、様々な作品を見られることが当たり前の環境があったのです。

 ジャンルは実に幅広く、恋愛、戦争、西部劇、ホラー、社会派ドラマの他に、単館ロードショウのイタリア映画、フランス映画なども普通に流れていました。ヒット作も、B級映画も名作も凡作も区別なく流れてきます。

 私は毎週それをほぼ選ばずに全部見て、「これは最高だ」と思える作品と「どうしても自分には合わない」と思う作品に出会えたのです。その積み重ねで、知らず知らずのうちに自分の好みの輪郭ができていったのだと思います。

 多様な選択肢があったからこそ、自分なりの好みを複合的に育てることができました。

 それに比べて現在のテレビ環境は、「売れるジャンル」に絞られがちです。宣伝も過熱し、同じ作品を繰り返し流し、国民全員が「これを見ろ」と迫られているように感じることすらあります。

 選択肢が極端に狭まり、「好きな物を自由に選べ」と言われても、まるでラーメンとチャーハンしかない食堂で「好きなだけどうぞ」と告げられるような気分です。これでは、自分の本当の好みを探すのは難しいだろうなと思います。

なぜ「好き」と思ったかを
丁寧に見つめ直してみよう

 けれど現代では恵まれた状況も生まれました。幸い、いまはSNSや配信サービスに膨大なコンテンツが並び、むしろ選択肢は豊富です。本当に羨ましい限りです。

 でもこの状況は昔と比較して「選ぶのが途方もなく難しくなった状況」とも言えます。なので「何が面白いか?」をひたすら検索し、やはり選ばれる物が偏るという状況も生まれています。

 だから私は新人に、こんなことを勧めています。

まず、何の情報も入れないで、サムネイルや予告だけで作品を選んでみて。そしてすぐ見始めるのじゃなく『なぜそれを選んだのか?どこに惹かれたのか?』を一度考えてみて。そうすれば自分は何が好きなのかが見えてくるから