これまで発信者の情報開示に手間がかかっていたことの反省から、同法では大手SNSなどのプラットフォーム事業者の免責要件を明確化し、誹謗中傷の被害者に対して発信者情報の開示を規定し、削除対応の迅速化、運用状況の透明化を求めています。

 現在は、誹謗中傷をしてきた匿名アカウントの発信者を素早く特定することが可能になっています。特定後、警察に捜査を依頼するなどして、厳しく対処していくことが大切でしょう。

池上彰が受けたのは
誹謗中傷を超えた殺人予告

 私は誹謗中傷どころか、殺人予告を受けたことがあります。

 ある日私が定期的に出演しているテレビ朝日の番組制作会社宛てに、脅迫メールが送られてきました。また翌日にはインターネットの掲示板に殺人予告が出たのです。私は全然知らなかったのですが、警視庁がネット上でパトロールをしていて、私に対する殺人予告を見つけたようです。

 警視庁から、「ネット上の匿名アカウントがあなたへの殺人予告をしていますが、どうしますか」と尋ねられたので、被害届を出したところ、発信者はすぐに突き止められて逮捕されました。

 静岡県在住の40代男性で、私とはまったく面識のない人物でした。私がテレビでロシアを批判的に紹介したのが許せないと怒っていたようです。ロシアによるウクライナ侵攻前、2018年のことでした。逮捕前に各社が警察から情報を得て、その容疑者が逮捕される瞬間を撮影し、ニュースで放送していました。

 被害者である私に、検察官が「正式な裁判にしますか、それとも向こうが罰金を払って和解にしますか?」と尋ねてきました。裁判外の和解をするかどうかということです。これ以上時間をかけてもしょうがないし、容疑者は名前や顔が報道されて社会的な制裁を受けているため、「もういいですよ」と10万円を払ってもらうことで和解しました。

 この事件で私がお願いした弁護士が、過労死問題の弁護団の事務局長を務めているため、受け取ったお金はその弁護団に全額寄付しました。